マネックスグループが仮想通貨事業者であるコインチェックを買収することになりました。コインチェックは今年1月、約580億円分の仮想通貨を流出させ、大きな社会問題を引き起こしました。今後は、マネックスの傘下で経営を立て直すことになりますが、今回の買収にあたっては「アーンアウト条項」という聞き慣れない契約が締結されています。これは一体どういうことなのでしょうか。

会見するマネックスグループの松本大社長(左)とコインチェックの和田晃一良社長

 アーンアウト条項とは、企業の買収に対して支払う対価を、買収後の業績に連動させる契約のことです。今回、マネックスは36億円でコインチェックの株主から株式を買い取りますが、マネックスが支払う対価はそれだけではありません。今後3年間のコインチェックの業績に応じて、追加でマネックスはお金を払うことになります。

 こうした契約は、たいていの場合、買う側と売る側の条件が完全に一致していない時に結ばれます。買う側はリスクを取って業績が悪化した会社を買い取るわけですから、できるだけ安く買おうとします。一方、売る側は、できるだけ高く売りたいと考えます。買う側がどうしても価格面で譲歩できない場合、今後、その事業で儲かった場合には追加でお金を払うという条件で、売る側を納得させることがあります。これがアーンアウト条項です。

 もしコインチェックが、来期以降、3年間で100億円の累積当期利益を出した場合、その半額である50億円を上限に、マネックスが追加でお金を支払うことになります。

 国内のM&A(企業の合併・買収)においてこうした契約が締結されるのは珍しいケースです。今回の買収について、マネックスが他社よりも好条件を提示した結果であるとの報道もありますから、買収金額をめぐって交渉が難航し、結果として追加支払い契約が締結された可能性が考えられます。

 コインチェックによる通貨流出が明らかになった際、記者会見に臨んだ同社の和田晃一良社長は「株主と相談しないと答えられない」という奇妙な発言を何度も繰り返し、株主の影響力が極めて強い会社であることが浮き彫りとなっていました(投資ファンドは経営者と株主間契約を結ぶことがあり、内容によっては経営者が実質的に経営権を発揮できないこともあります。投資ファンドと和田氏ら経営陣との間に契約が成立していたのかは不明ですが、そうした契約が存在していた可能性は否定できないでしょう)。

 もしそうであるならば、今回の売却についても、投資ファンド側が主体となってマネックスと交渉した可能性が出てきます。マネックスのリスクも抑えつつ、投資ファンドが可能な限り大きな利益を得られることを目的として、この珍しいスキームが採用されたのかもしれません。

(The Capital Tribune Japan)