映画の舞台となった古本屋「入江書店」がある福岡市・大名(撮影:秋吉真由美)

 「シージャッ!」

 撮影スタート!の意味の韓国語が響き渡る4月初旬の福岡市中央区大名。ファストファッションブランド店が軒を連ね、若者でにぎわう天神西通りから少し奥へ入った福岡一の繁華街・天神の西隣にありながら、下町の雰囲気を持つエリアだ。ファッションや雑貨、古着などの若者向けの店をはじめ、古くから看板を掲げている飲食店などが入り組んだ細い路地にひしめくように立ち並び、平日夜は仕事帰りのビジネスマンの胃袋を満たす、休日は若者のショッピングの街となっている。その一角にある、古本屋「入江書店」を舞台に、韓国映画の撮影が行われた。映画のタイトルはずばり『福岡』だ。

細い路地に飲食店が並ぶ福岡市・大名(撮影:秋吉真由美)

 メガホンをとるのは、中国出身のチャン・リュル監督だ。釜山国際映画祭ニューカレンツ部門グランプリなど数々の賞を受賞した『キムチを売る女』(2005)、北朝鮮との国境沿いの中国の村を舞台にした『豆満江』(09)、日本でも知られる女優シン・ミナが主演した『慶州』(14)、演技派俳優ヤン・イクチュン主演の『春の夢』(16)などを手掛ける。

タイトルは『福岡』

チャン・リュル監督(撮影:秋吉真由美)

 同作は、古本屋店主の男性が常連客の女性と訪れた福岡で、大学時代の仲間と再会し、青春時代に思いを馳せるストーリーになっている。

 日本で爆発的な韓流ブームを起こした韓国ドラマ『冬のソナタ』(02)のキム次長役を務めたクォン・ヘヒョ、映画『同窓生』(13)やドラマ『アイリス』(10)など幅広い作品に出演しているユン・ジェムン、ドラマ『シンデレラと4人の騎士〈ナイト〉』(16)などに出演しているパク・ソダムらが出演する。

なぜ福岡で撮影しようと思ったのか?

ほぼ全編が福岡で撮影された(撮影:秋吉真由美)

 チャン監督は、自身の監督作品『風と砂の女』(07)で初めてアジアフォーカス・福岡国際映画祭に参加した際に福岡を初めて訪れたという。福岡を撮影場所に選んだ理由について聞いてみた。

 「理由は2つ。福岡という街がとても好きだということ。映画祭で初めて福岡に訪れ、とても美しい街だと感じました。食べ物もおいしく、酒もおいしく、人も親切。一気に福岡の魅力に包まれました。もともと、観光はあまりしないタイプですが、福岡という空間が好きですね。好きなものを深く知りたくなるのは当然で、映画監督である自分はやはり好きな福岡で作品を撮るべきだと。長く過ごすからこそ、その空間を深く覗くことができますよね。福岡をもっと知りたくて映画を撮ることにしました」