政府が導入を目指している残業時間規制について、中小企業を除外するよう求める声が上がっています。大企業と同じように規制を導入すると多くの中小企業が倒産してしまうというのがその理由ですが、これは本当なのでしょうか。

写真:アフロ

 政府は、今国会に「働き方改革関連法案」を提出していますが、この中には罰則付きの残業時間規制が盛り込まれています。中小企業への規制適用開始については2020年4月を見込んでいます。

 しかし、この残業時間規制に対しては一部から中小企業を除外するよう求める声が上がっています。主な理由は、中小企業がこの規制を導入すると、経営が持続できなくなるというのがその理由です。中小企業に対する除外を主張している国会議員のツイッターには、反対意見が数多く寄せられています。

 中小企業が大企業と比較して儲かっていないのは事実です。資本金10億円以上の企業の営業利益率は5.8%ですが、1000万円未満の企業の場合、わずか1.1%となっています。大企業の平均年収は600万円近くありますが、中小企業は300万円以下です。

 また大企業の生産性(1人当たりの付加価値)は1700万円くらいありますが、中小企業は700万円程度しかなく、半分以下の価値しか生み出していません。低付加価値な業種は労働集約的であることがほとんどですから、長時間残業によって何とか売上高と利益を確保しているという中小企業が多いのは事実でしょう。

 つまり日本では大企業と中小企業に大きな格差があるわけですが、ここまで差が大きいというのは先進国ではあまり例がないといわれています。同一の統計がないので正確な比較はできませんが、米国や欧州における中小企業の利益率は大企業と比べて著しく低いという状況ではありません。

 その理由は、諸外国では市場メカニズムが働いており、利益率が著しく低い企業は、倒産などの形で市場から退出を迫られることが要因と考えられます。一方、日本では、政府が銀行に対して中小企業を倒産させないよう強く要請しており、銀行は必要に応じて追加支援しなければなりません。本来であれば倒産している企業が多数、業務を継続しており、国内の倒産件数は空前の低さとなっています。つまり雇用の安定を優先し、労働環境の向上は後回しになっているわけです。

 自由な経済活動の原則から考えれば、これは少々、異常な事態といってよいでしょう。雇用を優先してブラックな職場をある程度容認すべきなのか、しっかりと給料を払えない会社には市場から退出してもらうのか、議論していく必要がありそうです。
 
(The Capital Tribune Japan)