米国と中国が互いに高関税の措置を発表するなど、貿易戦争の懸念が高まっています。トランプ政権は貿易赤字を問題視しており、赤字を削減しようと躍起になっています。一方で、貿易赤字は経済にとってマイナスの影響は及ぼさないと指摘する専門家もいます。貿易赤字は経済にとって悪いことなのでしょうか。

中国への高関税措置に署名するトランプ米大統領(2018年3月22日、ロイター/アフロ)

 経済学上の理屈からすると、貿易赤字が生じていることと、経済成長は直接関係しません。むしろ経済が成長している国は需要が多く、国内の企業だけでは旺盛な需要をカバーすることができないので、輸入が多くなる傾向が見られます。米国経済は現在、絶好調ですが、貿易赤字が増えたことは、好調な経済の裏返しという見方もできます。

 貿易赤字が続くとドルが外国に流出しますが、一方で米国は世界最大の金融市場を抱えていますから、流出したドルは米国内への投資・融資という形で帰ってきます。このためドルの流出でドルの価値が下がるという弊害も今のところは生じていません。

 では、こうした状態で貿易戦争が勃発し、輸出入が減少した場合、経済はどうなるでしょうか。一般論としては、米国も中国も打撃を受けますが、その影響はおそらく中国の方が大きいでしょう。

 というのも、米国は食料と石油という、人間が経済活動を行う上で必須となる資源をすべて国内で自給することができます。極論を言えば、米国という国は貿易などをしなくても、経済を成り立たせることが可能です。

 もし本格的な貿易戦争となれば、米国は輸入していた製品の一部を国内産に切り替えることになるでしょう。短期的には国内の所得が増えますから、物価の高騰や金利の上昇を招きます。しかしながら、米国は輸出で稼いでいる国ではないので、米国の産業構造が大きく変わることにはなりません。

 一方、中国は日本と同じく外需依存の国です。中国は急速に豊かになっており、国内消費も増えていますが、輸出が経済の柱であるという状況は大きく変わっていません。米国への輸出が減れば、中国経済は大きな打撃を受けることになります。その点からすると、中国側が譲歩する可能性は高く、トランプ政権はそれを狙っているわけです。

 もし中国が譲歩しなかった場合、日本にとっても大打撃となります。日本メーカーが輸出した部品を使って中国メーカーが製品を製造し、最終製品を米国に輸出しているケースが少なくないからです。日本にとって、米国が貿易赤字国であることは、極めて重要です。

(The Capital Tribune Japan)