歴史人口学が専門の静岡県立大学長・鬼頭宏氏

 総務省は4月13日、日本の総人口が1億2670万6千人(2017年10月1日現在)と推計される、と発表しました。これは前年よりも22万7千人少なく、7年連続減少となります。人口減少局面に入った日本の総人口は、今後どんどん減り続け、国立社会保障・人口問題研究所の最新の推計値(2017年4月発表)では、およそ50年後、2065年には約8808万人、現在の約3分の2の規模まで縮小すると予測されています。

 THE PAGEでは、連載「人口減少時代」を2016年11月に開始。専門家の執筆や都道府県知事インタビュー、ルポなどを掲載して、これまでに経験がないとみられる長い日本の人口減少期はなぜ始まり、今後どんな時代になるのか。そして人口減少時代とどう向き合えば、新たな時代への転換が可能になるのか、検証してきました。

 連載を通し、何がみえてきたのか ── 。連載最初に執筆していただいた日本の人口減少を研究し、歴史人口学を専門とする静岡県立大学長、鬼頭宏氏に話を伺いました。まず、人口減少で問題視されている地方圏から都市部への人口流出について考えます。

“都市=蟻地獄”だった…江戸時代からみる 日本の人口減退期に起こること

少子化の原因は、若者が地元から流出することなのか

【図1】大都市圏と地方圏の出生率と死亡率のデータ

 本連載の知事インタビューで指摘されたのは若者が都市部へ流出する社会減による人口減少、中でも東京圏の一極集中だった。4月12日には全国知事会からの要望などを受け、東京23区内での大学・学部の新設と定員増を10年間にわたり原則禁止する地域大学振興法案が衆議院を通過した。

── 今の時代の人口減少の問題とは、若者が都市へ行ってしまうことが問題なのでしょうか。そうじゃないと思います。実は、いつの時代でも若者は都市へ行っていた。ところが今はなぜ問題になっているのか。それは農村・地方圏の人口が維持できなくなったということ。つまり大きな問題点は、どうして若者が都市圏へ行ってしまうのかではなく、どうして地方圏で出生率がそんなに下がってしまったのか、ということだと思います。

 2016年のデータで模式図をつくってみました。都道府県別の出生率と死亡率を加工し、東京と名古屋と大阪の三大都市圏と、それ以外の県に分けて、地方ごとにまとめたものです。各県の出生率と死亡率を単純計算しただけなのですが大きな間違いはないと思います。

 これからわかるように、実は大都市圏と地方圏で出生率は変わらない。変わらないどころか、大都市圏のほうが高い。それは若い人が多いからです。死亡率の違いは歴然としていて、大都市圏よりも地方圏のほうが高い。地方圏のほうが、お年寄りが多いからですね。

 そこで国立社会保障・人口問題研究所が、全国の年齢構造はどこでも同じと仮定し、人口調整して出した「標準化率」では、地域による死亡率・出生率がどうなるのか、みました。そうすると、地方圏の出生率のほうが若干高い。死亡率も差はほぼなくなりますが、若干地方圏のほうが高い。ただ、実際に影響するのは、先ほどの年齢構造で調整していない「普通率」ですから、この値でみれば地方圏のほうが、大都市圏より2倍以上人口減少圧力が大きいといえます。もし、地方圏の出生率が高ければ問題にならないわけですが、高齢者が多いということも反映して、地方はよけい人口減少率が高くなってしまっています。