女性記者へのセクハラ疑惑で、財務省の福田淳一事務次官が18日夕、突然辞任を表明した。リスクコミュニケーションの専門家である石川慶子さんは、福田氏の上司にあたる麻生太郎財務相の対応について、初動がまずい上に「セクハラ軽視と見られても仕方がない」と指摘する。

【画像】新聞労連が声明「セクハラは人権侵害だと財務省は認識せよ」

「セクハラ軽視と見られても仕方がない」

[写真]福田淳一事務次官のセクハラ疑惑での麻生太郎財務相の対応は?(ロイター/アフロ)

 週刊新潮4月19日号(4月12日発売)は、「『森友危機』の折も折!ろくでもない『財務事務次官』のセクハラ音源」とのタイトルで、福田氏のセクハラ疑惑を報じた。翌13日には、YouTube上に被害を受けた女性記者から提供された音声データを含む1分26秒の動画を公開。そこには、「抱きしめていい」「予算通ったら浮気するか」「胸触っていい?」などの生々しいやり取りが音声で録音されていた。

 麻生財務相は同誌発売日の12日、参議院の財政金融委員会で、福田氏から問題の記事に関する報告を受けたする一方で「訓戒で十分だと思っている」と追加の調査や処分を行わない考えを示した。

 この対応について、石川さんは「初歩の初歩の初歩がなっていない」と厳しく断じる。「こうした場合、例えその時点で事実関係を把握できていなかったとしても、まずは『報道を重く受け止めて、徹底した調査を行う』という姿勢を示すのが、クライシス・コミュニケーションの大原則。それを最初の段階でしなかったのは、セクハラ問題を軽視していたと見られても仕方がない」。

 その後の麻生財務相の対応にも、石川さんは厳しい目を向ける。記者団に13日、福田氏の問題について「あれが事実ならセクハラという意味ではアウト」と答えている。石川さんは「記者の質問に乗ってしまったのだろうが、あれはNG。仮定の話をしてしまうと、どんどん自分の首を締めてしまいます」。初動のまずさといい、仮定の話をしてしまった点といい、「麻生財務相の発言は軽率」との見方を示した。

セクハラは被害者目線で考えるのが重要

 当の福田氏は18日夕、事務次官を辞任することを突然表明したが、記者団に対して、セクハラ報道をあらためて否定し、新潮社を提訴する考えを示した。その夜の19日未明、テレビ朝日は緊急会見を開いて、同社の女性社員が福田氏からセクハラ被害を受けていたと発表し、同日中に財務省に抗議文を提出した。

 石川さんは、福田氏に関する報道を見聞きする中で、「セクハラは普段からのくせになっていて無自覚にやってしまう人が多い。福田氏も自覚がないので『やっていない』『裁判で争う』などと言ってしまうのではないか」と感じたという。くせは指摘されれば自覚が可能で、改善するための訓練もある。財務省はそうしたくせを問題視せず、指摘もしない組織だったのではないかと石川さんは指摘。「セクハラ問題が再発する可能性もある」と警告した。

 世界に目を転じると、米国のハリウッド女優のセクハラ体験の告白を皮切りに、被害を明らかにする「#MeToo」の動きが広がっている。「セクハラは社会の大きな課題であり、日本も乗り越えなければなりません。セクハラに対してきっちり向き合い、被害を受けた人の目線で考えるのが何よりも大切。今回の問題ではそれが不足しています」と石川さんは訴えた。

(取材・文:具志堅浩二)