J最小兵である柏のMF中川寛斗が新監督の初陣となった浦和を撃破(写真:中西祐介/アフロスポーツ)

 髪の毛をオールバックにした強面の風貌が注目された大槻毅暫定監督のもと、リーグ戦未勝利(2分け3敗)から同無敗(3勝1分け)へ劇的に蘇生。自信を回復させ、さらなる上昇気流に乗ろうとJリーグ史上でも屈指の名将を迎えた浦和レッズを、柏レイソルが返り討ちにした。

 三協フロンテア柏スタジアムで25日に行われたJ1第10節。2007シーズンから鹿島アントラーズを前人未到の3連覇に導いた、ブラジル人のオズワルド・オリヴェイラ新監督の浦和における初陣は、後半27分に喫した失点を取り返せないまま0‐1でタイムアップを迎えた。

 浦和に5試合ぶりの黒星を味わわせ、柏の連敗を2で止めた殊勲のヒーローは現役で最小兵のJリーガー、身長155cmのMF中川寛斗。左サイドからDF中山雄太がクロスを上げ、ファーサイドでFW江坂任が折り返したチャンスで、冷静沈着な仕事を完遂して値千金の決勝弾を決めた。

「クロスに対してまずニアサイドに走り込む。そこでも合わせたいですけど、そうじゃないときは味方のシュートが相手に弾かれたところや折り返しを、常に狙うようにしています」

 昨シーズンから取り組んできた相手ゴール前での神出鬼没な動きに、さらにひと工夫を加えた。江坂が折り返したとき、中川は身長183cmのDFマウリシオの死角で気配を消していた。そして、いざボールが来るや、マウリシオの眼前に突如として現れる。

 虚を突かれたマウリシオは金縛り状態になっている。ワンタッチでボールを右へちょっと動かし、マウリシオと日本代表DF槙野智章の間にシュートコースを生じさせる。次の瞬間、こん身の力を込めて右足を振り抜き、再三の好セーブを演じていたGK西川周作の牙城を打ち破った。

 誰よりも小さな体だからこそ小回りが利き、大男たちを翻弄できる。アンケート調査で「自分の好きなところは」と問われれば、自信を込めて「身長」と書き込んできたプロ6年目の23歳は、昨年6月4日に同じスタジアムで行われた浦和戦でも、決勝ゴールをヘディングで決めている。

 このときは右サイドから上げられたクロスがファーサイドで折り返されたところへ、ノーマークの状態で飛び込みながら首を思い切り伸ばして、文字通り執念で頭をヒットさせた。

「クロスが上がったときに、僕がいると『こいつなら大丈夫』という隙が相手にできると思う」

 謙遜しながら、それでも「常にその隙を突いていきたい」と目を輝かせた中川は、埼玉県浦和市(現さいたま市)で生まれ育った。ちょっとした縁から小学校4年生のときに柏レイソルU-12のトライアウトを受けるまで、実は柏というチームを知らなかった。

「自宅は浦和のフィギュアだらけだったし、完全に浦和のファンでしたから」

 中川は小学生時代をこう振り返る。もっとも、当時の浦和には小学生年代のジュニアがまだ設立されていなかった。自宅から通えたチームと言えば東京ヴェルディと横浜F・マリノス、そして一学年先輩が挑戦するも不合格となったことで偶然にも存在を知った柏だった。

「もし浦和にジュニアがあれば、浦和を受けていたかもしれない。そうなれば、僕の運命が変わっていたかもしれないですね」