今季の男子100mで9秒ラッシュなるか。左から桐生、多田、サニブラウン(写真は昨年の日本選手権/YUTAKA/アフロスポーツ)

2017年は日本の男子スプリント界にとって、ターニングポイントになるだろう。なぜなら、3つの快挙が実現したからだ。最初のインパクトは18歳のサニブラウン・アブデル・ハキーム(城西大附属城西高)だった。6月の日本選手権で100mと200mの2冠を達成。8月のロンドン世界選手権では男子200mで18歳5か月の最年少ファイナリストに輝き、世界中から喝采を浴びた。

 ロンドン世界選手権では男子4×100mリレーも感動的だった。日本チームはバトンパスに不安のあったサニブラウン、調子の上がらないケンブリッジ飛鳥(ナイキ)をメンバーから外す英断を下し、多田修平(関学大)、飯塚翔太(ミズノ)、桐生祥秀(現・日本生命)、藤光謙司(ゼンリン)の4人で銅メダルを獲得。選手層の厚さと見事なバトンワークで栄光をつかんだ。

そして9月9日の日本インカレで待望の瞬間がやってくる。桐生と多田のメダリスト対決が注目された男子100m。桐生が9秒98(+1.8)をマークして、伊東浩司が1998年12月のバンコク・アジア大会(10秒00)で触れてから、届きそうで、届かなかった「9秒台の世界」に突入した。それまでに10秒0台を10度も刻んだ男は、レース後にこう語った。

「9秒台で僕の陸上人生が終わりではなく、ようやく世界のスタートラインに立てたという感じです。スピード練習をして臨めば、今回以上の記録は出るのかなという楽しみがありますし、これからは世界のファイナル を目指して取り組んでいきたいです」

 桐生に対抗心を燃やしてきた山縣亮太(セイコー)も秋に結果を残した。春に右足首を痛めた影響もあり、日本選手権はまさかの6位。しかし、9月24日の全日本実業団対抗選手権で10秒00(+0.2)を刻み、前日本記録に並んだのだ。

 桐生、山縣、サニブラウンらの活躍で日本スプリント界は史上空前のハイレベルとなっている。昨季のベストを並べると、桐生9秒98(+1.8)、山縣10秒00(+0.2)、サニブラウン10秒05(+0.6)、多田10秒07(+1.8)、ケンブリッジ10秒08(-0.8 )。これらのタイムは日本歴代で1位、3位 、6位、8位 、9位タイとなる。全員がパーソナルベストだった。

 しかも、この5人のなかで最年長は山縣で25歳。今シーズンは年齢的にもまだまだ伸びる可能性を秘めたスプリンターたちによる“超高速バトル”が展開されることになる。9秒台ラッシュが見られるかもしれない。

 では有力選手たちの動向はどうなのか。最初に9秒台へ本格挑戦するのが、4月29日の織田記念に参戦する山縣とケンブリッジだ。

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