[写真]金正恩委員長(左)に促され、手をつないで軍事境界線を超える文在寅大統領(代表撮影/Inter-Korean Summit Press Corps/Lee Jae-Won/アフロ)

 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が10年半ぶり、3回目となる「南北首脳会談」を行いました。歩いて軍事境界線に近づいた正恩氏は出迎えた文氏と握手し、両首脳が互いに境界線を超え合う一幕も。その後の会談では「板門店(パンムンジョム)宣言」が発表され、終始「融和ムード」を印象づけるものでした。今回の歴史的な会談は、一方で、6月上旬までに予定される史上初の「米朝首脳会談」にどうつながるかも注目されました。日朝国交正常化交渉の日本政府代表を務めたこともある平和外交研究所代表の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。

【写真】4度目の核実験 北朝鮮はなぜ核を持とうとするのか?(2016年1月掲載)

具体性を欠く表現はやむを得ない

 文在寅大統領と金正恩委員長との会談は予定通り4月27日、南北境界線上の板門店の韓国側施設「平和の家」で開催されました。北朝鮮の指導者が韓国へ足を踏み入れることは、第二次大戦後朝鮮半島が南北に分かれて以来、初めてのことであり、また、今回の会談はこれまで核とミサイルの度重なる実験のため高まっていた東アジアの緊張を緩和する象徴的な出来事でした。

 南北首脳会談は2000年と2007年の2回、いずれも平壌で開催されました。今回の会談は3回目になりますが、これら3回の南北首脳会談は毎回特色がありました。第1回目は金大中(キム・デジュン)大統領と金正日(キム・ジョンイル)総書記の会談であり、敵対していた南北の首脳が初めて握手した、それこそ歴史的会談でした。

 第2回目は、廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と金正日総書記の間で行われ、韓国から北朝鮮への「経済協力」が特色でした。開城工業団地の建設や白頭山への観光事業を含む多数のプロジェクトが合意されました。なお、金剛山の観光事業はそれ以前の金大中大統領の時代から行われていました。

 今回の会談は、「非核化」に注目が集まりました。文在寅大統領と金正恩委員長との会談後発表された「板門店宣言」では「南北は完全な非核化を通じて、核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した」とうたわれました。これは原則的な宣言にとどまっており、具体性に欠けるという見方もあるようですが、北朝鮮の非核化は米国と北朝鮮の交渉によるほか解決できないことにかんがみると、このような表現になったのはやむを得なかったと思われます。

「非核化」が完全に、検証可能な形で達成されるかは、現時点で結論が出ているのではなく、今後の進展次第、とくに米朝首脳会談の結果いかんにかかっていると見るべきです。

今回の首脳会談は、国連の制裁がまだ有効であり、韓国として北朝鮮に経済面で協力できることは非常に限られている中で行われました。宣言においては、2007年の「10.4宣言で合意した事業を積極的に推進し、第一段階として東海線および京義線鉄道と道路を連結し、現代化して活用するための実践的な対策を取る」とうたわれました。この程度であればなんとか制裁の違反にならないとの考えのもとに合意されたものと思われます。

 また、今回の会談では、両首脳が並んで、直接、宣言の発表を行ったこと、完全に首脳だけの話し合いの時間(散歩)が設けられたこと、さらには夫人同伴の夕食会とされたことなど、南北間ではこれまで見られなかったことがありました。

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