槙野がハリルホジッチ前監督が反論会見で読み上げた激励文の真意について語る(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 ちょっぴり言葉に窮しながら、浦和レッズのDF槙野智章は思わず苦笑いを浮かべた。

 28日の明治安田生命J1リーグ第11節で、実に21年ぶりとなる白星を湘南ベルマーレに献上した直後の埼玉スタジアム内の取材エリア。前日27日に都内で行われた、ヴァイッド・ハリルホジッチ前日本代表監督の記者会見に関する質問が飛んだときだった。

 選手たちとのコミュニケーションや信頼関係が多少薄らいできた――日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長から告げられた解任理由に納得できないハリルホジッチ氏は、槙野による激励メッセージを唐突に読み上げながら、指摘されるような状況ではなかったと力を込めている。

「JFAの決定について非常に落胆しています。ハリルホジッチ監督とコミュニケーションの問題はなかったと、チーム内の一選手として申し上げたい。僕たちのコミュニケーションをさらに改善することは必要かもしれませんが、正直、僕の認識ではそういった問題は存在しなかった。
 個人的には監督のおかげで進歩できたと思っています。すごく厳しい監督でしたが、そのおかげでいまの自分がある。感謝しています。厳しい時間、苦しい時間もありましたし、非常に嬉しい時間もありました。ハリルホジッチ監督の(率いる日本代表で)W杯がぜひ見たかった」

 日本サッカー界が注目した記者会見を、当然ながら槙野も見ていた。
 そして、一夜明けた湘南戦後にメッセージの件を問われた。普段は饒舌な槙野が一瞬ながら沈黙したのは、ハリルホジッチ氏へ直接送ったものではなかったからだ。

「ハリルさんは会見でああいうふうに言っていましたけど、手紙を送ったわけじゃないというか、メッセージとかそういう形じゃないので。僕のインスタグラムを拝見したとうかがっていて、そういうこともあって会見で言ってくれたというのがあるんですけど」

 田嶋会長が都内で緊急記者会見を開き、ハリルホジッチ氏の解任を発表した翌10日に槙野は自身のインスタグラムを更新。日本代表のユニフォーム姿でプレーする自身の写真に、ハリルホジッチ氏への感謝の思いを添えている。

 <ハリルホジッチ監督 彼からは、たくさんの事を学びました。たくさん話しました。たくさん怒ら   れました。たくさん褒められました。たくさん笑いました。たくさんムカつきました。でも、彼のおかげでたくさん成長出来ました。今の僕がいるのは紛れもなく、日本代表として、ハリルJAPANとして、あなたからのご指導があったからです。心から感謝しています。Merci !!ヴァイード!!>(原文のまま)
 
 要は槙野に連絡したうえで、ハリルホジッチ氏はインスタグラムの言葉に捕捉。選手たちとのコミュニケーションが取れている証として、反論会見のなかで読み上げたことになる。

 2つを比較すれば、かなり異なる部分があると指摘したくなる。

 それでも、槙野は再び苦笑いしながら「嘘はひとつもないですから」と、結果的にハリルジャパンの最後の活動となった3月下旬のベルギー遠征を振り返った。

「マリ代表もウクライナ代表も非常に強く、1勝もできませんでした。ただ、そのなかで選手がバラバラになることもなかったですし、各ポジションで非常にいい競争もありました。コミュニケーションの問題というのがありましたけど、皆さんもご存知の通り、毎日2回くらいミーティングがあるくらい選手とスタッフの距離感も近かったですし、話し合いもかなりポジティブな面がありました」