日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。

 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。

【写真特集】故郷内モンゴル消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第10回

外部からきた物乞いにお金を出す女性。その後ろに自分の小遣いを取り出す少年=シリンゴル盟・ジューグンウジュムチン・ホショー(2011年7月撮影)

 ある日、多くの観光客に混ざってナーダムの会場へ向かっていた。すると目を疑う光景に出くわした。

 道端に白髪の物乞いが座り、通っていく人にお金をせびっていた。近年、中国では偽物の物乞いがあふれ、社会問題になっていた。どうやってこんな田舎にナーダムがあることを知って、こんな地方まできているのかということも、不思議に思った。

 しかし優しい遊牧民たちは、その物乞いに何の疑問も持たず、彼の持っている缶にお金を入れていた。5、6歳ぐらいの男の子もお金を差し出していた。慌ててなんとか一枚写真を撮った。

 私は涙が出そうだった。自分の大切な小遣いを困っている人に差し出す優しさ。この老人が偽者ではなく、本当の困窮者であることを願わずにいられなかった。遊牧民は仏教を信じているので、人助けを喜んでするし、心が優しい民族性なのだ。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第10回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図


アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。