岩合光昭(撮影:志和浩司)

 岩合光昭は19歳のころ、動物写真家だった父親の助手としてガラパゴス諸島を訪れた。初めての海外体験だった。

 「ダーウィンが進化論のヒントを得たり、変わった動物がたくさんいたり、すごい島なんだろうなと想像していたのですが、実際に行くと、ぜんぜん変わった島ではなかった。イグアナが溶岩の上にいても、僕の目にはすごく自然に映って。潮の干満によって海イグアナが海中へ入って海藻を食べる。そんな彼らの日常生活のなかに僕たちが入っていっただけ。動物たちの楽園のなかを、赤や黄色のジャケットの観光客たちが歩いていることのほうが違和感というか、僕は気になってしまって」

写真展「岩合光昭の世界ネコ歩き2」5月14日まで 日本橋三越本店で開催中

自然のスケールが違いすぎるガラパゴス 20歳の誕生日に写真家になることを決めた

 幼いころから父親に連れられて国内の山や野原を歩いていたが、ガラパゴスの自然はスケールが違った。インタビューを録音するために岩合の前に置いたマイクを指差しながら、こう説明する。

 「日本の場合、たとえば鳥なら双眼鏡で見ることが多い。動物と距離があるんです。でもガラパゴスでは、このマイクぐらいの近さで鳥がたまごを産んで雛がかえる。殻がひび割れて、雛のくちばしが出てくる。そのくちばしの先まで見えてくるんですね。生まれたばかりの雛は濡れていますが、乾いてくると羽根の一枚一枚が間近で数えられる」

 環境が異なれば、物事の発想も異なる。

 「ある日、水道が壊れ朝から顔を洗うこともできなくなった。チャーターしたヨットの船長に相談したら、『海に飛び込めばいいんだ』と(笑)。それで、海に飛び込んで泳いだのですが、誰かが僕の肩をたたくんです。アシカなんですよ。びっくりしました。アシカといえば、海岸では大きなうねりがきて波がめくれると、パイプラインをアシカがすり抜けていく。そのアシカのサーフィンも忘れられないですね」

 本当の大自然を実感し、ガラパゴスで20歳の誕生日を迎えたときにはすでに写真家を志していたという。

 「大工の息子が大工になった、みたいな感じですね」