日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。

 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。

【写真特集】故郷内モンゴル消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第10回

冬休みに両親を手伝う小学校3年生のバヤル君。勉強がとても好きだった=シリンゴル盟・アバガ・ホショー(2014年1月撮影)

 2014年冬の取材で、学校の休みで実家に帰っていたバヤルという男の子と出会った。父親の話では、日本から写真家が来ても、英語だったら少しは交流できるけど、日本語は全く知らないからどうしようとか心配していたそうだ。

 私が到着した翌朝、バヤルは早起きして両親の手伝いをしていた。羊たちに乾燥させた草を与え終わった後、特別に一頭にだけトウモロコシをあげているので理由を聞いた。

「これは僕の羊だよ。去年、生まれた時にお母さん羊が亡くなったので、僕が毎日ミルクを与えて育てたんだ」。そして、その羊としばらく遊んでいた。

 羊の群れを鉄条網に入れることが、彼の日課だった。大好きな自転車に乗って、掛け声で羊の群れを追いかける姿がとてもたくましく見えた。

 朝の仕事が一段落するとゲルに戻り、宿題を始めた。隣にいる父親が妻を手伝って、民族衣装を作っている。一家団らん、幸せな光景だった。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第10回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図


アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。