生物進化史の中でも、わたしたちを強くひきつける恐竜……。その登場は今から約2億3700万年前、三畳紀の中期から後期の境目とされています。しかし「最古の恐竜」発掘調査などから、恐竜のオリジン(起源)について、次々新情報が明らかになっているといいます。

 先月、学術雑誌Nature Communicationsに新たな恐竜起源の論文が発表されました。古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が、最初期の恐竜をテーマにまとめます。


中生代の覇者「恐竜」

現在1500種近くが正式に記載されている恐竜。中生代を通して大繁栄を遂げたが、その起源はどのようなものだったのだろうか? 最古の恐竜はどのような姿をしていたのだろうか?その起源に恐竜の多様性の秘密が隠されているかもしれない(写真:アフロ)

 先週、恐竜のオリジン(起源)に関する研究論文(Bernardi等2018)を学術雑誌Nature Communicationsにおいて見かけた。せっかくのいい機会なので「恐竜のオリジン」について、あらためてまとめてみることにする。

 「恐竜は三畳紀に初めて化石記録において登場した」

 もはや一般常識の一つとしてこの情報はあちこちで目にする機会があるかもしれない。TVの恐竜番組や関連の書籍、毎夏各地で催される恐竜展などにおいて、繰り返し見かけるはずだ。「あらためてとりあげる必要などあるのか?」。こんな声さえ聞こえてきそうだ。

 一恐竜研究者からあえて言わせていただく。「恐竜のオリジン」に関しては、まだまだたくさんの謎が潜んでいる。特に最初期の恐竜になると、その情報(=化石標本の数と質)はかなり限られてくる。

 恐竜のオリジンと初期進化プロセスの詳細はまだよく分かっていないのが現状だ。例えば初めて地上にその姿を現してから、恐竜達は“どのようにして”のちの中生代をまたいだ大繁栄へとつながっていったのだろうか?

 最初期の恐竜が現れたのは三畳紀の中期から後期の境目あたりと一般に推定されている。今から2億3700万年前くらいのことだ。その当時、恐竜以外にも他のグループの爬虫類の仲間がいくつも存在していたことはご存じだろうか? どうしてこうした多彩な爬虫類グループの中で、恐竜の仲間だけがうまく過酷な競争をすり抜け、後に多様性の道をひたすら突き進むことができたのだろうか?

 こうした恐竜の起源から後の進化上の大繁栄の神髄に迫るような問いかけには、まだほとんど答えることができないのが現状のようだ。初期の恐竜化石の記録はかなり限られているため、思いつきや推測の域から次の研究レベルへと進むことが難しいケースもあるようだ。

 そして「恐竜のオリジン」に関してもう一つ重要な事実がある。このテーマについては、現在進行形で今でも活発な研究が行われている。(今回とりあげるBernardi等(2018)の研究論文もその成果の一つだ。)世界各地で最古の恐竜を見つける発掘調査も毎年のように継続して行われている。

 そのため私も「最近どのような新しい研究がなされたのだろうか?」と、時々立ち止まっては定期的にチェックする必要に迫られる。

 こうした傾向は、例えばほぼ毎月のように目にする「最古の人類」に関する研究シーンに似ていなくもない。今手元にある情報を、翌月には新たに書き換える必要に迫られる。

 恐竜のオリジンに関しても実は似たようなことが言える。たとえ、古生物学や恐竜学の教科書に事実のように取り上げられている「恐竜の起源」の情報(年代や産出地、種のリストなど) ── こうしたものも定期的に“衣替え”をさせてやる必要がある。

 情報における「鮮度」はやはり重要といえるだろう。