ネットの呼びかけに応じて1000人が一斉に弁護士に対する懲戒請求を行ったところ、弁護士側が反撃し、損害賠償請求の準備をするという事態が発生しています。匿名でできるものと勘違いして懲戒請求を行った人も多いとのことですが、懲戒請求とはどのような制度なのでしょうか。

写真:アフロ

 弁護士は原則として社会正義のために存在する職業ですが、すべての弁護士が良識を持っているとは限りません。このため弁護士法や弁護士会の会則に違反した弁護士がいた場合には、所属する弁護士会に対して懲戒請求を行うことができます。そのための制度が懲戒請求制度です。

 懲戒請求があった場合、弁護士会は事案を調査し、懲戒委員会に審査を求めるかどうかを決定します。懲戒委員会での審査が必要と判断された場合には審議が行われ、懲戒相当と認められると懲戒処分が下されます。最悪の場合は除名処分となり、弁護士の資格を失います(資格を失う期間は3年間ですが、その後必ずしも弁護士会に再登録できるとは限りません)。

 懲戒請求は誰でもできますが、弁護士が簡単に処分されてしまうようでは、人権が守られないといった弊害も出てきます。このため弁護士会には弁護士法によって自治権が付与されており、その運営について外部が関与できない仕組みになっています。

 つまり、弁護士の社会的身分は法律で保護されており、懲戒などの措置はあくまで弁護士会自身が行う形になります。また、懲戒請求を行った人の住所、氏名は、懲戒請求の対象となった弁護士に告知されますから、匿名で懲戒請求ができるわけではありません。当然のことですが、懲戒請求の理由が著しく不当だった場合には、弁護士は損害賠償を請求することができます。

 このところ政治的なスタンスを理由に懲戒請求が行われるケースが増えており、この弁護士は安易な懲戒請求を戒めるツイートを行っていました。これに反発した人たちがネットで懲戒請求を呼びかけ、今回の大量の懲戒請求につながったようです。

 懲戒請求を受けた弁護士によると、懲戒請求を行った人の中には、匿名で懲戒請求が可能だと勘違いした人が多く、損害賠償請求の準備をしているとツイートしたところ、謝罪の連絡が相次いでいるとのことです。

 この懲戒請求が不当なのかどうかは、弁護士会の調査や損害賠償請求訴訟といった司法の場で判断されることになると思われますが、基本的に他人の社会的身分を左右するような行為を匿名で行うことはできません。もし相手に抗議したいことがあれば、正々堂々と行うのが社会のルールといってよいでしょう。

(The Capital Tribune Japan)