損害保険ジャパン日本興亜が大学卒業後3年以内に制限していた新卒採用の年齢を引き上げ、満29歳までとしました。すでに就業経験のある人でも29歳以下であれば受け付けるとのことです。

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 日本企業の人事制度は、これまで新卒一括採用が原則となっていました。求められる業務が単純で、業績が右肩上がりの時代であれば、こうした画一的な人事システムにも一定の効果がありました。しかし近年は社会のIT化や多様化が進んでおり、従来の人事制度では十分に変化に対応できないケースが増えています。

 以前から、卒業後2~3年の猶予を確保する企業はありましたが、3年程度の期間では、あくまで一括採用の延長線上であり、従来の制度と大差はありません。

 日本企業がここまで新卒採用にこだわっているのは、年功序列の人事制度を維持したいからです。基本的に日本企業は年次によって賃金と役職が決定されます。昇進のスピードに多少の違いはあっても、基本は入社年次であることに変わりはありません。

 年功序列にしておけば、年齢が高い人はエライという話にできますから、人事の公平さに気を遣う必要がありません。一方、年齢に関係なく、抜擢や降格などを行うと、その人事に対する説明責任が生じてきます。また年齢のカベが取り払われてしまうと、管理職になった人は、年齢が上なので何となくエライという雰囲気でチームをまとめるという従来のやり方が通用しなくなります。権限や責任を明確にし、単なる役割としてリーダーを務めなければなりませんが、これはなかなか大変なことです。

 新卒採用の年齢の幅を広げることも実は似たような効果をもたらします。会社の中では年齢が高い人がエライというのが基本ルールであるにもかかわらず、30歳の新人が入ってしまうと、周囲はその人をどう処遇してよいか分かりません。結果として、幅のある新卒採用は歓迎されなかったわけです。

 その意味で、今回の損保ジャパンの試みは、日本企業の人事制度に大きな風穴を開けるものといってよいでしょう。この動きが各社に広がってくれば、いずれは年功序列型の人事制度の見直しにつながる可能性が高まります。同時にリーダーとは何かというビジネスの根本的な部分においても、見直しを迫られるに違いありません。

(The Capital Tribune Japan)