[写真]2018年1月のダボス会議で握手するトランプ大統領(右)とネタニヤフ首相(ロイター/アフロ)

 アメリカのトランプ大統領は今月8日、オバマ政権時代の2015年にアメリカを含む6か国がイランと結んだ核合意の枠組みから離脱すると発表した。トランプ大統領は2016年の大統領選挙でイラン核合意の見直しを公約に掲げ、オバマ政権とは大きく異なる外交を展開することを示唆していた。核合意からの離脱という国際的な取り決めよりも、アメリカ国内の支持層によりアピールできる選挙公約を選択した格好だが、今回の離脱決断はトランプ政権最大の失策だと断言する有識者も少なくない。トランプ政権が示した対イラン強硬策は、イスラエルやサウジアラビアといった周辺国にも影響を与えている。

【写真】「公約は死守」安泰なトランプ大統領がもたらす世界不安

米国は対イランで経済制裁強める構え

[写真]核合意離脱表明を受けて協議したイラン外相(左から2番目)と英独仏外相(右から順に)(代表撮影/ロイター/アフロ)

 オバマ政権が尽力し、2015年にアメリカを含む6か国がイランと結んだ核合意の枠組みについて、トランプ大統領は就任前から枠組みそのものを激しく非難していた。タカ派として知られるジョン・ボルトン氏が4月9日に大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に就任すると、アメリカの核合意からの離脱はより現実味を帯びた話となった。それでもフランスのマクロン大統領や、ドイツのメルケル首相、イギリスのジョンソン外相はそれぞれワシントンを訪れ、トランプ大統領と会談を行った際に「離脱を考え直すべき」と説得を試みたが、トランプ大統領が心変わりすることはなかった。

 ヨーロッパ諸国から懸念の声が上がる中、トランプ大統領は8日にイランと交わした核合意から離脱することを発表した。「(核合意は)偏った内容であり、我々は決して合意すべきではなかった。平穏や平和がもたらされることはなかったし、今後ももたらされないだろう」と、トランプ大統領はオバマ政権の取り組みを非難。21日にはワシントンでポンペオ国務長官が対イラン経済制裁について言及し、「過去に例のない規模の経済的な圧力をかける」とイランに警告を発している。

 イランに対しては、核開発の中止だけではなく、シリアからのイラン人兵士らの撤退を含めた12の項目を全て順守するよう要求しており、全ての順守が確認されるまで経済制裁は続く見通しだ。同じ核の廃棄に関する要求でも、北朝鮮とイランではアプローチが大きく異なる。前述のボルトン氏は昨年7月、フランスのパリで開かれたイラン人亡命者の集会で演説を行い、「2019年までにイランにおける政権交代を実施させたい」と語っている。大統領補佐官に就任したボルトン氏が、核合意離脱の先に何を見据えているのだろうか。

 対イラン経済制裁で、アメリカはヨーロッパ諸国を含む関係国に協力を求め、世界規模で徹底的に経済封鎖を行う見通しだ。ヨーロッパ諸国からはアメリカの独善的なやり方に対する不満も少なくないが、最終的にはアメリカに従わざるを得ないだろうという見方が強い。神戸に拠点を置く配管資材の専門商社「米田商店」は中東や東南アジアにも多くの顧客を抱え、同社の米田安彦社長はトランプの核合意離脱のニュースを滞在中のテヘランで知った。米田氏は長年かけて構築した、イラン国内の取引先との関係にも影響が出るのではと危惧する。

「この数年間、イランとの商売は問題なく行えましたが、アメリカの経済制裁を他国が追随することによって、取引先だけではなく銀行に至るまで、接触ができなくなる可能性が出てきました。イランに関しては、経済制裁の影響によるリスクがどれくらい大きくなるのかを注視しています」