のんびりと川辺で休む馬群。昔からナリン・ゴル河畔は代々の遊牧民が夏営地として使ってきた=シリンゴル盟・ジューグンウジュムチン・ホショー(2011年7月撮影)

 日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。

 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。

【写真特集】故郷内モンゴル消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第11回

「5種の家畜」

定住した家の近くに設けられた鉄条網内の牧草地で草を食(は)む羊の群れ。家畜を放牧できる牧草地はますます減少している=シリンゴル盟・バロンウジュムチン・ホショー(2012年8月撮影)

 遊牧文化とは一体何だろう ── 。現在、遊牧文化やその担い手である遊牧民について、いろいろな受け取り方がある。ただ、そこに一つ大きな間違いがあるようにみえる。好きなように家畜が草原を歩き回り、遊牧民はなんの目標もなく、気楽に生きていると誤解されていないだろうか。

 遊牧とは、決まったある地域の範囲の中で、その年の雨量、積雪、気温、草の出来栄えなどに応じ、季節に適した牧草地を巡り、移動し、家畜を育て、その上で、家畜の肉から毛皮まで全部をいただき、利用し、自給自足で生きていく生活様式だ。

 彼らはウヘル(牛)、モリ(馬)、テメィ(ラクダ)、ホェニ(羊)とイマーガ(ヤギ)の5種類の家畜と共に生きる。これらをモンゴルでは「タボン・ホショー・マル」と言う。日本語に訳すと「5種の家畜」という意味だ。

 これら「マル(家畜)」の世話をし、マルと一緒にいきていく遊牧民をモンゴル語で「マルチン」と呼ぶ。モンゴル語は、名詞に「チン」を付けると、その名詞を職業とする人になる。例えば、農業は「タリヤ」で、農業に従事する人は「タリヤチン」に、「アーン」は狩猟で、狩猟民は「アーンチン」となる。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第11回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図

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アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。