なぞが多い恐竜起源について、先月科学雑誌に新しい研究結果が発表されました。イタリア北部の地層群で見つかった足跡化石は、恐竜の一大進化イベントが「約2億3400万年前から2億3200万年前」頃に突然起こった可能性を指摘しています。なぜ恐竜最初の一大進化が、このタイミングで起こったと考えられるのでしょうか。

 古生物学者の池尻武仁博士(米国アラバマ自然史博物館客員研究員・アラバマ大地質科学部講師)が報告します。

三畳紀後期に起きた初期恐竜の多様化

中生代を通して大繁栄を遂げた恐竜。その多様化のはじまりは三畳紀後期に起きた気候の大変動とそれに伴う陸生脊椎動物の絶滅によって引き起こされた可能性を新しい研究は指摘している(写真:アフロ)

 恐竜の先祖は今から約2億4700万年前(三畳紀前期の終わり頃から中期のはじめ)の化石記録においてみられる (「最も古い」とされるものは「足跡化石」による)。こうした事実は前回の記事 (「オリジン・オブ・恐竜」(中))において紹介した。しかし、化石自体(特に骨格化石)の数は、三畳紀後期前半である「カーニアン期」(2億3700万年―2億2700万年前)そしてそのつづきである「ノーリアン期」(2億2700万年-2億805万年前)に入るまで、極端に少ないのが現状だ。

 この事実は最古の恐竜が出現した時、他の脊椎動物群(=様々な爬虫類や大型両生類、初期哺乳類の遠い先祖にあたる単弓類などのグループ等)の陰に隠れて、細々と生活していたことを示しているようだ。最初期の恐竜種はどれも体がそれほど大きくなく、種の数自体も非常に少なかったからだ。

 後のジュラ紀や白亜紀にみられる「陸地の覇者」としてのイメージは、どうひいき目にみても最初の出現時に持ち合わせていなかった。

 しかし三畳紀後期のカーニアン期に入ると、恐竜の種 ── 特に「恐竜上目Dinosauria」に属すもの ── の化石の数は飛躍的に多くなる。肉食で完全な二足歩行を備える「獣脚類Theropoda」、超大型の草食恐竜「竜脚形類Sauropodomorpha」そして「鳥盤類Ornithischia」といった、より馴染み深い主要グループの直接の先祖達が同時期に現れた。まるで最高のタイミングをあらかじめ知っていて、ある日一斉に開花し、野原の隅々まで広がる菜の花の群れのように。

 筆者注:恐竜上目、そしてより初期の恐竜型類と恐竜形類の進化関係は「オリジン・オブ恐竜(上)」 の記事において紹介した。

 4月初めに発表されたBernardi等(2018 )の研究は、三畳紀後期はじめに起きた「恐竜の最初の多様化」の要因について、興味深い考察を行っている。

 ―Massimo Bernardi, Piero Gianolla, Fabio Massimo Petti, Paolo Mietto, Michael J. Benton. 2018.Dinosaur diversification linked with the Carnian Pluvial Episode. Nature Communications 9 (1) https://www.nature.com/articles/s41467-018-03996-1

 恐竜が最初の多様化を遂げる直前、三畳紀の世界地図を独り占めにしてきた「超大陸パンゲア」はどうも、かなり急激で大きな「気候の変化」に直面したようだ。そしてこのグローバル規模で起きた気候の大変化が、後の恐竜大躍進と直接深く関わっていた可能性が高い。今回はこの興味深いストーリーに迫ってみる。