背番号「3」の関学大のQB奥野が実戦復帰した

アメリカンフットボールの関学大―日大の定期戦で悪質なタックルを受けて全治3週間の怪我をした関学大のQB、奥野耕世(19)が復帰、あの事件以来となるフィールドに立った。27日に大阪・千里万博の「エキスポフラッシュフィールド」で行われた関学大対関大戦で復帰したもの。前半はホルダー、後半からQBとしてフル出場した奥野は勝ち越し点となる38ヤードのロングタッチダウンパスを決めるなど活躍、チームの勝利(27-16)に貢献した。奥野は、事件後、初めてメディアの取材に応じて苦悩と“加害者”である日大のDL宮川泰介選手への思いを口にした。

 被害者となった奥野の復帰試合に30社100人以上のマスコミがかけつけた。客席は満員で立ち見まで出た。発表観客数は3000人。関西学連によると「通常は1500人から多くても2000人。エキスポフラッシュフィールド始まって以来の観客数かもしれません」。奥野と、その家族が脅迫されていた事件もあり、警備員だけでなく、私服警官まで目を光らせるという超異例の厳戒態勢の中でのキックオフ。

 背番号「3」がフィールドに現れたのは、第2クォーターの終盤。関学大がフィールドゴールを狙う際、キッカーにボールをセッティングする「ホルダー」と呼ばれるポジションで入った。ボールの扱いに慣れているQBが兼任するポジションで、まずはフィールドゴール成功をサポートした。

 奥野がQBとして登場したのは第3クォーターからだった。
 司令塔としてランを操り、21ヤードの小気味のいい正確なパスを決め一気にゲインすると4分49秒にRB中村行佑の逆転のタッチダウンを演出した。そのテンポとミスのないパスで関大ディフェンスを手玉にとっていく。圧巻は10-10のスコアで迎えた第4クォーターの最初のプレー(セカンドダウン)。「ショットガン・フォーメーション」でスナップを受けた奥野は、パスを投げるターゲットを探しながらボールをキープ。エンドゾーンへ走りこむWR山下喜史へ弧を描くような38ヤードのロングパスを通す。キャッチした山下は、そのままタッチダウン。これが勝ち越し点となった。

「左オープンサイドを狙うパスでしたが、空いてなくて。バックサイドに切り替えたときに22番のレシーバーが空いていたので、そこへ投げた。素直に嬉しかったです」

 この咄嗟の判断力が奥野の武器で、自身も、「ラッシュでプレーが崩れた後のスクランブル、スクランブルしてどこへ投げるか、というプレーが長所です」という。

 確かに、その後のシリーズでは、パスターゲットが埋まっていると判断するとスクランブルで自ら9ヤードを走ってファーストダウンを奪うなど、その自在性も際立った。 

 これで春の公式戦は終了した。奥野は、「2回生になって初めて公式戦に出始めて、相手ディフェンスのカバーや、判断がまだまだだったんです。そういう部分を見極めて、カバーリードして空いているところへ投げる、というのが春の課題でした」という。事件に巻き込まれ、QBとしての課題を消化しきれなかったことは不満なのだろうが、そのパサーとしての能力には非凡さがあり、秋のリーグ戦ではエースQBの西野航輝に続く、2、3番手のQB候補としての期待値も高い。

 伝統の関関戦での逆転勝利と、奥野の満点復帰に鳥内監督も「ほっとした」と言う。

「奥野は、3日しか練習をしていないのにいいパフォーマンスができた。(後半に奥野が入って)オフェンスのテンポがよくなった。上出来。思った以上に怪我の治りも早くて心配はなかった。精神面は心配していたが、意外と普通にしゃべっているからね。奥野は視野が広い選手。ファーストターゲットに投げれないと切り替えてレシーバーを見つけて投げれる。(ディフェンスのマークから)逃げながらターゲットを探すのがうまい。でも、まだ2年。勉強も忙しい。文武両道でやってほしい」

 鳥内監督は、チームに事件の経過報告はしているが、できる限り、その話題には触れないように心がけて、試合前にも「集中しよう」とだけ言った。