写真:アフロ

 1990年代前半以降の日本のようにデフレ下で名目成長率が伸び悩み、「名目成長率<10年金利」の状態にあると資産デフレに陥りやすいことが知られています。名目成長率が長期金利を持続的に下回ることは、調達コスト対比で投資機会が乏しい状況を意味することから、金融引き締め的な環境と考えることができます。そうした下で、企業の粗利益に相当する名目成長率が鈍化・マイナスになることは、株式市場への逆風に他なりません。

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名目GDP・10年金利の推移

 反対に「名目成長率>10年金利」の状態にあるとき、資産価格には追い風が吹きます。1990年前後の日本、2000年代半ばの欧米で観察されたバブルは、名目成長率対比で低利な資金調達が可能だったことから過大なリスクテイクが助長され、証券・不動産市場へ資金が流入したという文脈で説明が可能です。

 本邦株式市場においても、「名目成長率>10年金利」を満たす場面で、株式時価総額の名目国内総生産(GDP)比が100%を超えるのは、そうした環境が投資家に有利であることを物語っています。むろん、株式時価総額の名目GDP比が100%を超えたことを以って資産バブルというつもりはありませんが「名目成長率>10年金利」の状態が資産価格の上昇を促すことは確かでしょう。こうして考えると、名目成長率と10年金利の差は資産価格への追い風の風速と言ってよいでしょう。

株価時価総額の推移

 しかしながら、ここへ来て追い風の風速は弱まっています。2018年1ー3月期に名目GDPは前期比年率▲1.5%と6四半期ぶりに減少しました。GDPデフレータが前期比マイナスになったため、実質GDPの前期比年率▲0.6%よりも減少幅が大きくなりました。付加価値の単価とも言うべきGDPデフレータのマイナスは、企業収益の圧迫に他なりませんから、株価への影響が懸念されます。

 筆者は堅調な企業業績に鑑みて、日経平均が先行き12カ月で2万5000円に達するとの見方を維持しています。従来、リスクは上下に均衡していると考えてきましたが、ここへきて上振れリスクが幾分低下している印象です。

(第一生命経済研究所・主任エコノミスト 藤代宏一)

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