日本映画界の役者の層が薄い

樹木希林(撮影:磯部正和)

 ことあるごとに「早く私の代わりの人が来てほしい。いつでも席を空けているから」と発言している樹木。しかし、出演オファーは絶え間なく続いており、作品は途切れることがない。やはり唯一無二の存在なのだろう。

 しかし本人は「そんなことはありません」とキッパリ。さらに「監督は気の毒よね。日本映画界の役者の層が薄いから。幅もないし……」とつぶやく。

 真意を問うと「近代劇の監督はいつも絶望していると思う。山田洋次監督が以前、タレント名鑑を見て『あきらめ表』だと言っているのを覚えています。そういう思いをさせているのは私たち俳優。いま、いろいろな監督が現代を舞台に『こういうものが撮りたい』という表現に挑んでいるのに、役者の層が追いついていかない」と現状を嘆く。

 続けて「人数はいるのですが、みな同じで個性がない。私がテレビで見ていても、会ったことがある人でも区別がつかなかったりする。舞台挨拶などでも、狭い場所でみんなヘアメイクとスタイリスト連れて同じようなことをしている。そういう風なことをして、人間が描けるのかなと思うんです。役者として、人物を演じるというのはとにかく、普通の生活をしなければいけないと思うんですよ」と持論を展開する。

私も監督を失望させている“あきらめ表”の一人

 その意味で言えば、『万引き家族』で樹木は、入れ歯を外し、髪をボサボサにし、ある意味で“気味の悪さ”を体現している。

 「顔が飽きちゃったというのはあるのですが、老人の気持ち悪さみたいなものを、知らない若者が多いんだと思う。人間は年をとると崩れていくんだよというのは、私は経験をしていたから、表現したいなという思いがあったんです」

 本作での役柄を見ていると、本人は「そんなことはない」と否定するが、やはりその存在感は日本映画界にとっては絶対的なものに感じられる。しかし、やはり「先ほど申し上げましたが、私も監督を失望させている“あきらめ表”の一人なんです」と自己評価は低い。

 では、どうしたらこうした状況を打開できるのか――。

 「自分自身を広げるしか方法はないんですよ」と静かにつぶやくと「私はもうこんな年で先がないですからあきらめていますが、もう少し若ければ、プロダクションでももう一度立ち上げてやるべきだったかなとは思います。でももうそんな能力はないですからね」と自嘲気味に笑う。

 樹木は作品ごとに「もうこれが最後でいい」と話しているが、それでも、本作でみせた芝居は、多くの俳優の指針となるだろうし、圧倒的な存在感を示している。まだまだ日本の映画界での活躍を期待してしまう。

 「そんな期待されても困りますよ。いくつだと思っているんですか」と突き放したようにつぶやくが「まあ、ご縁があればね」と笑顔で語ってくれた。

(取材・文・撮影:磯部正和)

修正履歴

  • 本文中に沖田秀一監督との記述がありましたが、正しくは沖田修一監督でした。(2018年6月4日19時56分)

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