ネット上の著名人で、現在、ZOZOTOWN運営企業のコミュニケーションデザイン室長を務めている田端信太郎氏が「過労死には本人の責任もある」と発言したことで、ネットでは炎上騒ぎが起こっています。田端氏の真意はどこにあるのでしょうか。

高プロ制が導く異次元の「労働者保護」外しの未来

写真:アフロ

 田端氏は、リクルートからライブドアに転じ、LINEの上級執行役員を経て、今年の3月にはZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイのコミュニケーションデザイン室長に転じています。ツイッターでの発言がよく話題となる、いわゆるネット上の有名人の一人です。

 炎上のきっかけとなったのは、高度な専門職を労働時間規制の対象から除外する「高度プロフェッショナル制度」についての発言です。この制度は時間に縛られず、成果で社員を処遇できるようになると歓迎する声がある一方、一部からは、無制限の残業や過労死につながるとして批判の声が上がっています。同氏はツイッターで、「過労死には本人の責任もある」「(労働者は)鎖でつながれているわけでもない」と発言。これに対して「過労死した人の家族の前でも自己責任と言えるのか」といった批判が飛び交っているという状況です。

 発言の真意は、労働者は自分で自分の身を守る必要があり、企業に対してしっかり権利を主張しなければダメだということであり、一方的に過労死に追い込む企業側を擁護したものではないようです。同時に田端氏は、労働者と企業が協定を結んだ場合に限って法定労働時間を超えた残業を可能とする、いわゆる「36協定」の存在を問題視しており、こうした協定を結んだ労働組合や従業員の代表者にも責任があるとしています。

 日本において36協定が存在し、労働者側が事実上無制限の残業を受け入れているのは、終身雇用制度が存在しているからです。労働者に対して生涯の雇用を保障するためには、雇用者数について制限せざるを得ず、繁忙期には長時間残業で乗り切るしかこの制度を維持する方法がありません。

 日本の労働市場がもっと流動的になり、自らの権利や報酬について多くの労働者が会社と交渉できるようになれば、転職や解雇は当たり前となり、一方でこうした過度な残業は消滅するでしょう。その意味で田端氏の主張は一種の正論といってよいかもしれません。

 ただ田端氏は、実質的な奴隷労働として国際問題にも発展しつつある外国人技能実習制度についても、環境が劣悪なら「労働基準監督署に駆け込めばよい」と発言しています。能力が高く一定以上の生活水準を維持している人にとっては、自らの人権を主張するのは簡単なことかもしれませんが、劣悪な環境に置かれている人は、権利の自覚や主張そのものが困難という現実があります。労働者が権利をしっかり主張するのが大事というのはその通りですが、現実問題に対処するには、社会的に弱い立場にある人への配慮が必要でしょう。

(The Capital Tribune Japan)