このところ転勤制度について疑問視する声が多く聞かれるようになってきました。ニッポンのサラリーマンにとって転勤は当たり前のものでしたが、こうした価値観も徐々に変化しているようです。

イメージ写真(写真:アフロ)

 日本の大手企業では、全国を転勤するのは当然という価値観が続いてきました。毎年、春になると新しい赴任地に多くの人が引っ越していきます。しかし最近ではワークライフバランスという観点から、転勤したくないと考える社員が増えてきました。

 会社側もこうした動きをふまえ、転勤の制度を一部見直すところが出てきてきます。三菱UFJ銀行は、来年以降、転勤の有無について社員が希望を出せるようにする制度を導入します。これまでは全国転勤がある職種と、業務内容や地域を限定した職種の2つに分けて社員を処遇していましたが、今後は、すべての職種において社員が希望を出せるように制度を変更します。外資系の保険会社であるAIG損害保険も全国を13の地域に分け、原則として同一地域内だけでの異動にとどめる方針を打ち出しています。

 しかし転勤を抑制する新しい試みに対しては不安視する声も上がっています。三菱UFJ銀行のケースでは、転勤を望まない社員と転勤OKの社員でどのように処遇が異なるのかはっきりしたことが分かっていません。結果的に転勤OKの社員がエリートとして処遇され、そうでない人は昇進が遅れるということであれば、多くの人は転勤OKを選択するはずですから、実質的に制度が機能しなくなってしまいます。

 また企業全体の問題を指摘する声もあります。そもそも日本企業でこのような理不尽な転勤が行われているのは、終身雇用制度を維持するという目的もありました。

 日本企業の場合、同じ人がずっと同じ組織に在籍することになりますから、なれ合いや不祥事が起こりやすくなります。お金を扱う銀行で転勤の頻度が高いのはこうした理由からです。またメンバーが同じということになると、相性が合わない上司と部下との間で色々と問題が発生する確率も高まります。定期的に異動させることで、人間関係をスムーズにするという役割もあったわけです。

 ムダな転勤を抑制することは生産性の向上につながりますが、なれ合い体質などに代表される日本の企業社会の悪癖も同時に改善していかないと、転勤の抑制が裏目に出てしまう可能性があります。転勤というのは、日本の企業社会そのものに起因する制度ですから、転勤というものをどう扱うべきなのか、会社全体の問題として考えていく必要があるでしょう。

(The Capital Tribune Japan)

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