6月12日にシンガポールで開かれる米朝首脳会談で、非核化の議論はどこまで進むのか。5日に東京の外国特派員協会で会見した慶應義塾大学の礒崎(※)敦仁准教授は、今後のことは予測不能だとした上で、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が核を手放しても現体制を温存できる道を探っている可能性を指摘した。「完全な非核化」の実現は、アメリカのトランプ大統領がどこまでそれにこだわって交渉するかにかかっていると述べた。

 以下は質疑部分の書き起こし全文。

【写真】金正恩氏は核を手放して体制温存できる道を模索?

完全な非核化に向けた用意は北でも見られる

[写真]北朝鮮の非核化について語る礒崎准教授

記者1:(英語)

礒崎:はい。ありがとうございます。私が北朝鮮が核を放棄する可能性について申し上げるのは、北朝鮮を疑わしく見るよりも格段にリスクの高いものだと考えます。北朝鮮が過去にやってきた経緯をなぞりますと、北朝鮮の行動を疑わしく見るのは私もできますが、しかし北朝鮮の論調から読み解いたことをあえてここでご説明を申し上げようと思います。金正恩国務委員長は5年前に並進路線、byungjinですね、並進路線を掲げたときに、北朝鮮はなぜ核を持たなくてはいけないのか、その理由を中東諸国の教訓という言葉で表現しました。つまりリビアのカダフィ体制が核開発計画を放棄したためにリビアのカダフィ体制は崩壊してしまった、だから核は絶対に持たなくてはいけないというのが金正恩委員長の認識でした。

 しかし核を持つことによってむしろアメリカからの脅威が高まった一方、核を持たなくても韓国と日本というアメリカの同盟国が隣にいる限り、アメリカは手出しができないということを昨年、悟ったこともまた事実でありましょう。核を持たなくても体制が保証される、つまりトランプ政権以降のアメリカの政権も北朝鮮を攻めることはないという確証が持てるのであれば取引をしても良いという段階に至ったように見えます。結局アメリカのトランプ大統領が非核化、完全な非核化にこだわって交渉できるかどうかに懸かっているところも大きいと思います。

 しかし完全な非核化に向けた用意は北朝鮮で行われているように見えます。ICBM発射実験を成功させたと主張した昨年の11月29日ではなく、今年の4月20日に入ってから、今年の4月20日に突然、「並進路線」を下ろしたという状況証拠があります。今年の3月から北朝鮮の論調は引き締めにかかっています。社会主義を愛せという論説を出したり、帝国主義の思想文化的浸透を防げ、帝国主義の思想を防げという非常に引き締めを強く図る論調が今年の3月から見られます。これも状況証拠にすぎませんが、今年34歳といわれる金正恩国務委員長がデメリットの大きい核兵器をこのまま何十年も持ち続けるよりも、核を手放すという判断をすることによってむしろ、今の体制をそのまま温存できる可能性を考えたのではないかと思うわけです。

 アメリカの大統領が、核保有国で超大国のアメリカの大統領が金正恩国務委員長と会って握手をするということは、あの体制をそのまま認め、あの体制のトップに金正恩国務委員長という人物がいるという、その存在を認めることにほかなりません。合意をしても履行段階でさまざまな問題が生じることは間違いないとみています。しかしトランプ大統領という取引をしようという大統領が、建国70周年の北朝鮮にとって初めて出てきたことはチャンスと捉えているに間違いありません。トランプ大統領が北朝鮮の強制収容所をやめろ、解散せよ、ですとか、もしくはインターネットを解禁せよといった北朝鮮の国家体制の自由化を求めているからではないわけであります。

 しかし何が起きるか分からないというのは、非常に不安定な状況の中で何が起きるか分からないというのは私も結論としては同じであります。しかし北朝鮮が踏み込んだ合意を、北朝鮮の譲歩によって踏み込んだ、譲歩によって合意をしたことにより、あの北朝鮮の体制が今後、何十年もずっと続いていく可能性について、もっと日本では議論が行われたほうが良いのではないかと思います。北朝鮮の体制の本質そのものが変わるわけではないからであります。