写真:ロイター/アフロ

 同じ試合を見ていたはずなのに、違う試合を見ていたかのような感想だった。

「やろうとするサッカーがだんだん見えてきた感じはします。ディフェンス面は前半、すごく良い形でディフェンスをしていたと思います。中盤は大島を中心に速いテンポで繋いでから崩そうという意図が見えたことは非常に良かったと思います」

 6月8日、スイスとの親善試合を終えてミックスゾーンにやってきた日本サッカー協会の田嶋幸三会長は柔らかな表情でこう語った。

 終わったばかりのゲームはPKで先制され、ゲーム終盤にカウンターからトドメを刺され、0−2で敗れた。日本代表の決定機の数はゼロ。とてもではないが「非常の良かった」とは思えなかった。

 たしかに、5月30日に行われたガーナとの親善試合はオプションとして考えている3バックを試しただけで終わっていたから、ベースとなる4−2−3−1を採用したこのスイス戦で「やろうとするサッカー」が少しは見えた。

 機能したかどうかは別にして、プレスを掛けてボールを奪ってショートカウンターを狙う。ショートカウンターを繰り出せなければ、ボールを回しながらスピードアップするタイミングを伺う――。

 例えばこれが18年9月の試合だったなら、つまり、ワールドカップ後の試合であるならば、納得のいく内容だ。しかし、19日に行われる本大会初戦のコロンビア戦まで11日しかないのだ。

 だから、会長の言葉にも、「チームとして危機感はまったく感じていません」という西野朗監督の言葉にも頷けない。選手のほうが危機感を覚えている。長友佑都は「厳しいなという一言です。このままではワールドカップでは勝てないと思う」と嘆いた。

 スイス戦を終えて改めて悔やまれるのは、チームのベースすら定まっていないのに、ガーナ戦でオプションを試したことだ。ガーナ戦も4−2−3−1で戦い、本田圭佑のトップ下を試していれば、スイス戦の内容はもっと良くなったはずなのだ。今後、3バックを採用する機会が果たして本当にあるのか疑わしく、「ガーナ戦を無駄にした」という見方もできる。

 ワールドカップ初戦まであと11日、残されたテストマッチはパラグアイとの試合だけ。もう1試合たりとも、1日たりとも無駄にできないが、西野監督はスイス戦の翌日をオフにした。これはコンディションの問題もあるから一概に批判はできないが、パラグアイ戦では「今、バックアップでトレーニングしている選手たちに入ってもらう」と、メンバーの入れ替えを公言したのだ。

 現状、スイス戦に出場したメンバーが主力と見られているが、パラグアイ戦でサブ組を出場させるなら、レギュラー組が連係を磨く機会は本大会までないことになる。
「やるべきことは多いと思います」と吉田麻也は語ったが、それなのに、またもう1試合を無駄に使おうとしているのだ。
「固定したメンバー、固定したシステムでステージを上げていくのではなく、いろんな可能性を常に求めたい」という指揮官の考えも分からなくはないが、どうも決断力に欠ける印象は否めない。

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