大谷の肘故障の原因はスプリットではなかった?!(写真・アフロ)

エンゼルスの大谷翔平(23)が右肘の内側側副靱帯を損傷し、故障者リスト入りして全米に衝撃を与えた。損傷の度合いは、3段階のうち中程度の「グレード2」。最重度の「グレード3」となれば、トミー・ジョン手術の名で知られている靱帯再建手術が必要とされている。球団の発表によれば、7日(日本時間8日)にロスで医師の診断を受け、多血小板血漿治療と幹細胞注射を受けた。3週間の安静後に状態を調べ、その様子を見て、今後の治療方針を固めるという。

 米ヤフースポーツの記事によると、大谷の故障が発表された後、エンゼルスのエプラーGMは、故障の原因について記者から「スプリットフィンガーの多投が原因ではないか?」との質問を受けた。
 メジャーではボールを挟むスプリット(フォーク)は肘への負担が大きいと考えられているからだ。実際、スプリットを多投する投手は、メジャーリーガーには少なく、ヤンキースの田中将大や大谷ら日本人投手の特徴にもなっていて、その田中も同様の故障を発生させた。だが、エプラーGMは「研究では、スプリットフィンガーが、トミー・ジョン手術の原因になると立証されていない」と返答した。この記事にも「内側側副靱帯が壊れる確かな原因は誰にも分からない」とも書かれている。

 実は、米国では、トミー・ジョン手術が必要な故障の原因と、その防止策についての研究が積み重ねられている。
 2016年、「Orthopaedic Journal of Sports Medicine」に米ドレクセル大学のジョン・プロドモ医学博士らが、メジャーリーグでトミー・ジョン手術を受けた投手が、手術を要すると診断される前に、どのようなボールを投げていたのかについての調査結果を発表した。2002年から15年までに肘の靱帯再建手術を受けた114人の投手のグループと、全く手術を受けていない3780人の投手のグループが、どのような球種を、どのような球速で、投げていたかを比較。球種は、直球、スライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップ、スプリット、その他に分類した。
 しかし、手術を受けたグループと、手術を受けなかったグループが投げていた球種の割合は、全く同じだったという。そこに肘の故障との因果関係は見出せなかったのだ。負担がかかるとされるスプリットについてもそうだった。そこに科学的な根拠はなかったのである。

 では、球速はどうか。
 手術を受けた投手が手術前に投げていた真っすぐの平均球速は92.08マイル(約148.2キロ)で、手術を受けていない投手の平均球速の91.33(約147キロ)をやや上回っていた。
 これらは、変化球についても同様で、手術を受けた投手が、手術前に投げていたスライダーの平均球速も83.62マイル(約134.6キロ)で、手術を受けていないグループの平均球速83.01マイル(約133.6キロ)をわずかに上回っている。カーブも前者の平均球速は77.75マイル(約125.1キロ)で、後者の平均球速は76.86マイル(約123.7キロ)。チェンジアップは、前者の平均球速は83.57マイル(約134.5キロ)、後者の平均球速は82.96マイル(約133.5キロ)。問題のスプリットについても、前者の平均球速は85.41マイル(約137.5キロ)で、後者の平均球速は84.16マイル(約135.4キロ)。例外はカットボールだけだった。
 この研究によると、直球のスピードが速くなるほど、側副靱帯再建手術を受ける確率が高まることも分かったという。スピードボールを繰り出す動きに靭帯を含めた肉体が耐え切れないというわけか。

 大谷は5月30日(日本時間31日)のタイガース戦で、今季のメジャー先発投手としては最速となる101・1マイル(162・7キロ)をマークした。今季の球速ベストは、いずれも大谷が出したもので、その平均速度もメジャートップクラスになる。トミー・ジョン手術を受ける条件となる球速は、確かに大谷に当てはまっている。
 もちろん、このひとつの研究だけでは、球速が速い投手ほど、手術を受ける確率が高まると言い切ることはできない。このほかに投手の経験年数や投球数、投球フォームなどの影響も考えられるからだ。

 

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