日本の3倍という広大な面積を占める内モンゴル自治区。その北に面し、同じモンゴル民族でつくるモンゴル国が独立国家であるのに対し、内モンゴル自治区は中国の統治下に置かれ、近年目覚しい経済発展を遂げています。しかし、その一方で、遊牧民としての生活や独自の文化、風土が失われてきているといいます。

 内モンゴル出身で日本在住の写真家、アラタンホヤガさんはそうした故郷の姿を記録しようとシャッターを切り続けています。内モンゴルはどんなところで、どんな変化が起こっているのか。

 アラタンホヤガさんの写真と文章で紹介していきます。

【写真特集】故郷内モンゴル消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第11回

木製のエルール(紡錘車)でラクダの毛で糸を作る。若い人はこの作業をできる人はほとんどいない=シリンゴル盟・アバガ・ホショー(2014年1月撮影)

 今、ラクダは、ゴビ地帯やほかの砂漠地帯など、わずかに限定された地域のみで飼育されている。

 ラクダは一番感情が感じられる家畜だと思う。モンゴル人はラクダの目のことを「美しい」、「悲しみが潜んだ目」と言う。とても優しい心を持って、人の感情も読み取ることができると言われている。

 まれに、生まれたばかりの仔ラクダに乳を与えない母ラクダがいる。モンゴルではこのことを「ゴリンヘー」と言う。その際は、遊牧民が馬頭琴を弾きながら、歌を歌う。その歌を聴いているうちに、母ラクダは母性が蘇り、涙をポツポツと流して、わが子の匂いを嗅ぎ、乳を飲ませだすのだ。羊の場合も同様だ。

 近年喜ばしいことに、ラクダの乳が糖尿病などの生活習慣病に大きな効果があると注目されるようになってきた。私が取材したブリヤート遊牧民もラクダの乳を搾り、インターネット上でその乳を販売していた。いつか遊牧民がネット産業などを効率よく利用し、恩恵を受けるようになれば、伝統文化も少しは見直されるのではないかと期待している。(つづく)

※この記事はTHE PAGEの写真家・アラタンホヤガさんの「【写真特集】故郷内モンゴル 消えゆく遊牧文化を撮る―アラタンホヤガ第11回」の一部を抜粋しました。

内モンゴル自治区の地図

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アラタンホヤガ(ALATENGHUYIGA)
1977年 内モンゴル生まれ
2001年 来日
2013年 日本写真芸術専門学校卒業
国内では『草原に生きるー内モンゴル・遊牧民の今日』、『遊牧民の肖像』と題した個展や写真雑誌で活動。中国少数民族写真家受賞作品展など中国でも作品を発表している。
主な受賞:2013年度三木淳賞奨励賞、同フォトプレミオ入賞、2015年第1回中国少数民族写真家賞入賞、2017年第2回中国少数民族写真家賞入賞など。