14歳の張本は2人の中国の金メダリストを倒す金星を重ねて優勝した。その進化の理由とは?(写真・アフロスポーツ)

 サーブは卓球において自らコントロールできる唯一で最初の攻撃といわれる。

 6月6〜10日、福岡県北九州市で開かれたITTFワールドツアー・ジャパンオープン男子シングルスで、世界王座に君臨する中国の3選手を倒し優勝した張本智和(14、JOCエリートアカデミー)の歴史的快挙の裏にもサーブをめぐる巧みな戦術があった。

 まず世界選手権、ワールドカップ王者で2016年のリオ五輪金メダリスト(シングル、団体の2冠)の馬龍(29)との準々決勝。3大タイトルを制した「絶対王者」を迎えた大きな山場に張本は、とっておきの“新兵器”を用意していた。投げ上げサーブだ。トスを高く上げボールの落下速度を利用して回転量とスピードをアップさせるサーブ技術の一つだが、これを使う選手はよくいるし、取り立てて特別なサーブではない。

 だが、張本はこの投げ上げサーブを今年3月のワールドツアー・カタールオープンでブラジルのトップ選手であるウーゴ・カルデラノ(21)が効果的に操るのを見て「自分も強化したい」と男子日本代表の倉嶋洋介監督に申し出たという。

 実は張本は「投げ上げサーブが世界チャンピオンに効くとは思わなかった」と試合後に本音を明かしている。だが、実際はトスが落ちてくるまでの間に馬龍のレシーブに入るタイミングが微妙にずれ、本来であれば厳しいコースに決まるはずの台上レシーブなどにミスが出た。

 また倉嶋監督は、YG(ヤングジェネレーション)サーブと呼ばれる逆横回転のサーブで「馬龍のツッツキ(ラケット面を斜め上に向け突っつくように返球する技術)を防いだ」と話しており、加えて馬龍の返球が浮いてきたら相手のバック側に打ち返し、ブロックされたボールをアタックするという戦術を徹底したとも明かしている。

「サーブの種類が多いのも張本の良さ」と倉嶋監督。
 リスクを考え新たな技術習得に抵抗感を示す選手もいる中、張本はまだ14歳(6月27日で15歳)と若いこともあるが、貪欲に技術を増やしていこうとする柔軟な姿勢に定評がある。

 一方、2012年のロンドン五輪金メダリスト(シングルス、団体の2冠)の張継科(30)との決勝では、勝負どころのサーブに加えレシーブの選球眼も光った。
 連取された第1、2ゲームこそ相手の徹底したフォア前サーブに張本の得意なチキータレシーブを封じられ主導権を握られたが、第3ゲームからは「チキータだけじゃなく少しストップとか違うレシーブも入れていった」という張本。これで張継科のサーブを崩して2ゲームを奪い返すと、続く第5ゲームは張継科、第6ゲームは張本が取って勝負は最終の第7ゲームへもつれ込んだ。

 

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