世界中が注目した初の米朝首脳会談は集まった報道陣の数に対し、肝心の北朝鮮の非核化に関して具体的な成果が乏しかったと評されています。その首脳会談直前のG7サミットでは保護主義的な政策に対するトランプ大統領が孤立している様子が報じられました。

 中間選挙を控えるトランプ大統領、そして自民党総裁選が迫ってきた安倍首相 ── 。今回の外交舞台から、米国と日本、そして両首脳の文化的な位置づけをどのようにみるか。建築家で文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋さんが、考察します。

セレモニーかショーアップか

米朝首脳会談、両首脳の笑顔ばかりが印象に残った=2018年6月12日、シンガポール(写真:ロイター/アフロ)

 「歴史的会談」というから、シンガポール会談はヤルタ会談のように記憶されるのかというほどだったが、中味は空疎な印象である。両国の国旗を背景にした、トランプ大統領と金正恩委員長のにこやかな握手姿ばかりが目立った。

 金委員長が中国の飛行機で現れたのも印象的で、米国と中国、北朝鮮をめぐる二大国の隠れたパワーバランスを感じさせたが、何よりもツイッターによるトランプ大統領の前宣伝が激しかった。こんな会談はかつてない。

 大統領の記者会見は具体性がなく、自画自賛に満ち、あの「完全で検証可能かつ不可逆的」という言葉もどこかへ行ってしまった。おそらく事前交渉における北朝鮮側の抵抗が強く、逆に求められる「完全で検証可能かつ不可逆的」な保証の確約ができなかったのだろう。

 その上、金委員長を才能ある優れたリーダーとして持ち上げ、ついでに安倍首相も、文在寅大統領も、習近平主席も、すばらしい友人としてほめ讃えた。自分の功績への協力者という位置づけである。

 しかしながらまったく無意味というわけでもない。少し前までは、核とミサイルの実験がくりかえされ、米軍の巨大空母が極東に集結し、日本はミサイルの迎撃準備に大わらわ、経済制裁で餓死者も出るなどが伝えられたのだから、平昌オリンピック以後、大転換があったことは間違いないのだ。要するに板門店の南北会談が劇的でありすぎ、今回は前宣伝されすぎたのである。つまり期待過剰であった。

 本格交渉の始まりのセレモニーであると考えればそれなりに納得できるが、それにしても選挙目当てのショーアップが目立った。今のトランプ大統領は、11月の中間選挙を控え、何よりも国内の「人気」が欲しいのだ。途中で会談中止をチラつかせたのも、金委員長からのあの大きな親書とやらも、双方協力の演出であったと取れないこともない。