ほぼ寝たきりで26年生きてきた筆者の人生。お陰様で数多くの困難に触れてきたが、その中でも、特に日常生活で手こずったもの、そして、大きく進化を遂げたものがあった。それは「読書」である。

Amazon Echoのおかげで、電子書籍を読むのではなく、聞けるようになった。読書の負担は大幅に減った。

 筆者は顔と親指しか動かせない。本を読みたいと思っても、自分の力で本を手に取り、そのページをめくることができないのだ。今でこそ、電子書籍が誕生し、パソコンやタブレットといったデバイスなどで、肢体不自由者でも比較的容易に本を読むことができる時代になったが、一昔前までそんなわけにもいかなかった。

 では筆者が子どもの頃、学校の教科書や流行りの漫画を読みたいと思ったとき、筆者はどうしていたのか?

 答えは単純明快だ。それは、ひたすら「誰かにめくってもらう」のである。正直、皆さんも「そりゃ、めくってもらうんだろう?」と多少想像はついていたと思うが、では、さらに皆さんが介護をする立場になって考え、少し想像を膨らませてみてほしい。

 その本が20ページや30ページではなく、500ページ以上もある小説だったらどうだろうか。国語・数学・理科・社会などの教科書で、1冊200ページ近くある本を何十冊もめくるのはどうだろうか? しかも、そのページ送りは5分に1回だったり、早いときは2~30秒に1回。はたまた、読み手の気まぐれによって急に前のページに戻ったりもするのである。

 介護する立場でいえば、この上なく面倒くさいだろうし、筆者の場合、子どもの頃はこれを母にやってもらっていたわけだが、正直、本をめくりながら発する母の文句は半端ではなかった(笑)。

 つまり、「本を読む」ということは、障がい者にとっても大変な行為だが、介護をする方も献身的な努力を必要するのだ。しかし、筆者が高校生のとき、こんな読書の仕方から脱する文明の利器を手に入れた。

 「自動ページめくり機」だ。自動ページめくり機というのは、その名の通り、「自動的に本のページをめくってくれる」機械だ。筆者が当時使っていたものはダブル技研という会社の「りーだぶる3」という製品だった。

 読みたい本を機械にセットするだけ。あとはリモコンやスイッチの操作を行えば、自分である程度自由に本を読むことができるスグレモノだ。筆者は初めてこの製品と出会ったときは衝撃的に感動したし、周りの障がい者にも強く勧めた。

 だが、このスグレモノでも一つだけネックになったことがあった。それは「自分で本を交換できない」ということだ。どうしても介護者に本を機械にセットしてもらい、本を読むことができる状態まではやってもらう必要がある。なので、気まぐれに読む本を替えるわけにいかない。しかし、そんなネックも次に登場する文明の利器で一気に解消する。それは皆さんもご存じの「電子書籍」である。

 もはや、今の時代は紙のページをめくるのではなく、パソコンやスマホ1台で読みたい本を読みたいときに読むことができるようになった。そして、普通なら何冊も本を持ち歩けば重たいが、電子書籍なら何千冊、何万冊持ち歩いても苦にならないのである。

 そして最近の筆者の読書は、もはや「読まずに聞く」ことに変えてみた。「Amazon Echo」などのAlexa対応スマートスピーカーが、電子書籍の音声読み上げに対応したからだ。

 「アレクサ、本を読んで」と呼びかけるだけで、ライブラリにある中から直近にダウンロードした書籍を読み上げくれる。また、一度終了しても、次回以降は最後に読み上げたページの続きから読み上げる機能もある。おかげでどんなに忙しくてもオフィスでは作業をしながら、そして、自宅では寝る前のベッドの中でも誰の手も借りることなく、筆者は読書に没頭している。