CKから大迫が勝ち越しゴール。日本は初戦でコロンビアを下し、白星発進した=2018年6月19日サッカーW杯ロシア大会(写真:ロイター/アフロ)

 サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会が開幕しました。日本は初戦のコロンビア戦で勝利をおさめました。アジアのチームがW杯で南米勢に勝つのはこれが初めてです。

 国や民族の思いも加わり、観客が熱い声援を送るW杯。そこにはサッカーのもつどんな文化・力学が影響しているのでしょうか。そしてなぜ南米はサッカー人気が高く、強豪国が集まっているのでしょうか。

 文化論に関する多数の著書で知られる名古屋工業大学名誉教授・若山滋さんが、地政学の視点から執筆します。

国家と民族の相克

フランス対オーストラリア戦=2018年6月16日サッカーW杯ロシア大会(写真:ロイター/アフロ)

 日本はコロンビアに勝って好発進。今後が楽しみだ。

 それにしても一回戦は、前回の覇者ドイツが破れたり、ブラジルやアルゼンチンが引き分けたり、まさに「勝負は時の運」である。

 テレビからも現地の熱狂ぶりが伝わってくるが、僕が注目したのは、フランス vs オーストラリア戦であった。

 フランス・チームのメンバーはほとんどがアフリカあるいは中東系のようであったが、オーストラリア・チームのメンバーはほとんどが白人(ヨーロッパ系)であった。つまりヨーロッパのチームがヨーロッパ人以外の民族で構成され、遠く離れた、もともと先住民(オーストラリアの場合はアボリジニ)が住んでいた国のチームがヨーロッパ系民族で構成されているのだ。

 したがって、今のヨーロッパ人が、ヨーロッパ系を敵にまわして非ヨーロッパ系を熱狂的に応援する結果ともなる。日本ではあまり感じることのない、国家と民族の相克である。

 なぜ、こういったことが起きるのか。それが帝国主義というものだ。

球技とアングロサクソン

チュニジア対イングランド戦でイングランド代表を応援するサポーター=2018年6月18日サッカーW杯ロシア大会(写真:Shutterstock/アフロ)

 前にスポーツと帝国主義について書いた。

 スポーツには、陸上や水泳やレスリングなど基本的な体力を競うものと、サッカーや野球やバスケットボールなど複雑なルールを有するものがあり、後者は、だいたいが球技(バドミントンやホッケーといった球的なものを扱うものも含め)である。そしてそのルートはイギリス系とアメリカ系に大別される。

 サッカー、ラグビー、クリケット、ポロなどはイギリスが、アメリカン・フットボール、野球、バレーボール、バスケットボールなどはアメリカが家元(起源となると複雑で諸説ある)だ。いずれもチェスや将棋に似て、相手のゴール(王)を奪うことが目的で、戦争を模擬化しているのだろう。

 つまり球技というものは、圧倒的にアングロサクソンが世界に広めたのであり、このことは彼らが実際の戦略に長けていたことにつながるのかもしれない。

 サッカーやラグビーのワールドカップで、イギリスだけは、イングランドだけでなくスコットランドやウェールズの代表も出場するという、一種の特権が与えられているものそのためである。英語が共通語となり、背広が共通服となっていることも含め、文化としてのアングロサクソン帝国は今も続いているといえようか。