6月12日から千葉県で起きているまとまった地震活動。国の地震調査委員会が前日の11日に、この地域に注意喚起していたことから、ネット上では「地震予知の精度向上が恐ろしいレベル」などと驚きの声が上がった。しかし、「現時点で確度の高い地震予知は不可能」というのが多くの地震学者の見解だ。それでは、いったいなぜ今回の地震については、注意を呼び掛けることができたのか? 呼びかけを行った本人である、地震調査委員会委員長の平田直(ひらた なおし)・東京大学地震研究所教授に話を聞いた。

大阪府北部の地震、「次の地震につながる可能性も」東北大・遠田晋次教授

房総半島沖の群発地震と同期したスロースリップイベント(出典:防災科学技術研究所)

── 世間では、「ついに地震予知が実現した」といった声も聞かれます。

平田 残念ながら、今の地震学の実力では、いつどこで地震が発生するか、といった地震予知はできません。夢ではありますが、人類が生きている間は、どこまでいっても正確な予知はできないと思います。それでは、なぜ11日の記者会見で注意を呼び掛けたのか。それは、6月に入ってから千葉県東方沖のプレート境界で、「スロースリップ(ゆっくり滑り)」と呼ばれる現象が起きていることが、気象庁や研究機関のデータから確認できたためです。

── スロースリップとはどんな現象ですか?

平田 スロースリップを説明する前に、まず、プレート間の地震について説明します。千葉県東方沖では、フィリピン海プレートと呼ばれる海のプレートが、日本列島がある陸のプレートに徐々に沈み込んでいます。海のプレートが沈み込む時、陸のプレートは引きずり込まれて変形し、ひずみをためていくのですが、最終的には耐えられなくなって元の状態に戻ろうと急激に大きく跳ね上がります。これが海と陸のプレートの境目で発生するプレート間地震と呼ばれる地震のメカニズムです。

── 2011年3月の東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震(マグニチュード9.0、最大震度7)や近い将来の発生が危惧されている南海トラフ巨大地震がこのタイプですね。

平田 そうです。海底が大きく動いてしまうため、巨大津波が発生し、甚大な被害が出ることがあります。しかし、ひとことで陸と海のプレートの境目といっても、ぴったりくっついてひずみがどんどんたまっていく領域と普段からずるずるとすべっている領域があるなど、一様ではありません。このため、一気に元の状態に戻ろうとするばかりでなく、数週間から数年間という長い時間をかけてずれ動く場合があります。これがスロースリップです。プレート間地震の一種ではありますが、ゆっくりとずれ動くので、体に感じるような揺れがほとんどないのが特徴です。