大ブーイングを受けた西野監督の決断を城氏は「根拠ある賭け」と支持した(写真・ロイター/アフロ)

 西野監督は賭けに出た。0-1のスコアで迎えた後半37分だった。同時進行のコロンビア対セネガル戦で、コロンビアが1点のリードを奪う情報が伝わると、すぐさま長谷部を呼び、武藤に代えて投入した。追いつくための攻撃的な選手でなくバランサーの長谷部をアンカーのポジションに置いたのである。そして、もう攻めることをせず、後ろでボールを回して時間と共に失点とイエローカードをもらうリスクを潰しに出る戦術にシフトした。

0-1のまま試合を終えれば、勝ち点、得失点、総得点でセネガルに並ぶが、2つのフェアプレーポイントの差で日本の決勝トーナメント進出が決まる。それらの情報を持たせた上で長谷部をピッチに入れたのである。
 だが、アディショナルタイムを含めると、まだ11分ほど時間が残っていた。もしセネガルがコロンビアに追いつけば、その時点で日本の決勝トーナメント進出の可能性は消える。

負けている日本が攻めず、すでにグループリーグ敗退が決まっているポーランドも勝利優先でボールを取りにこないという“休戦状況”に場内からは大ブーイングが起きた。だが、西野監督は、日本にとっては非常にリスキーな戦術を決断したのだ。

おそらくだが、コロンビア対セネガル戦に派遣している分析班から、試合の展開と、その内容の報告が西野監督の元に届き、その情報を根拠に西野監督は決断したのではないだろうか。その戦術に賛否が出るのは当然。しかし、私は、それだけのリスクを背負って勝負に出て、その時点で決勝トーナメント進出の確率の高い選択肢を取った西野采配に賛同したい。ワールドカップでは、ありえる決断なのだ。

 きっと西野監督は、ドキドキしながら、その11分間を過ごしたのだろうが、結果論として、その賭けは成功したのである。“持っている”のだ。

ブラジルに勝った1996年のアトランタ五輪でも、グループリーグ突破のかかった第3戦のハンガリー戦で、西野監督は「前からいけ!徹底的に攻めて点を取れ」という大胆な指示を出した。相手の映像を見て、徹底的に丸裸にした上での根拠ある決断。この頃から「根拠があればリスクを負う決断を厭わない」勝負師だった。