文化庁が検討を進めている先進美術館構想に対して異論が出ています。美術館主導で美術品の売買を活性化しようというプランなのですが、美術界からは「美術館を設置する本来の趣旨と異なる」「所蔵品が流出してしまう恐れがある」といった疑問の声が上がっています。

イラスト:アフロ

 世界のアート市場は約7兆円の規模がありますが、このうち約4割を米国が占めています。日本の市場は約2400億円と中国の6分の1しかなく世界シェアは4%以下となっています。文化庁では日本のGDP(国内総生産)の大きさや富裕層の人数などを考えると、日本のアート市場は成長の余地があると分析。美術館主導でアート市場を発展させるという構想を打ち出しました。

 先進美術館(リーディング・ミュージアム)を設置し、ここを中心に美術品の売買も活性化していくというものなのですが、これに対しては美術界からは異論が噴出しているようです。

 現状の美術館は、法律によって「国民の教育、学術及び文化の発展に寄与すること」と定められており、教育施設あるいは文化施設という位置付けになっています。美術館は画商やコレクターなどから美術品を購入することがありますが、あくまでも必要な美術品を揃える目的であり、美術品の売買を活性化するために美術館が存在するわけではありません。

 しかしながら、日本では美術館に通う人は少なく、各地の美術館は予算不足で機能不全を起こしています。美術品の売買に関与するという考え方は、予算の捻出という意味合いが強いと考えられます。

 美術館が美術品の売買に関与することの是非はともかくとして、従来の文化政策と整合性がとれておらず、予算不足を解消するため、行き当たりばったりでプランを出してきたという印象は否めません。

 こうしたちぐはぐな議論が行われてしまう背景には歴史的な経緯も関係しています。欧米の美術館は、王侯貴族が独占してきた美術品を市民に開放するという、民主主義の象徴としての役割があり、単純に美術品を市民に見せるための存在ではありません。しかし日本の美術館の多くは、明治以降に欧米のシステムを真似て導入したものであり、日本国内で美術館をどう位置付けるのかについてはあまり議論されませんでした。

 美術品売買という一足飛びの議論をするのではなく、美術館をどう位置付けていくのか、もっと根源的な議論が必要です。
 
(The Capital Tribune Japan)