寝屋川高のチームスローガンは「和~達成~」と「不動心」だ(写真・寝屋川高野球部提供)

 今春の近畿地区大会大阪府予選で夏、春、夏の全国制覇をもくろむ大阪桐蔭を9回に後アウトひとつまで追い詰めた公立の進学校、寝屋川高の進撃の秘密に迫るレポートの後編。今夏“打倒私学”を狙う寝屋川高を支えているのが、プロ野球顔負けの分析野球だ。16日が北大阪大会の初戦。大阪大会を公立高が制すれば、1990年の渋谷高以来、28年ぶりの快挙となる。寝屋川高は、公立旋風を巻き起こせるのか?

 寝屋川高の強さを語る上で特筆すべき点が、試合の戦術、戦略にある。
 ベンチ外メンバーで形成された“スカウティング部隊”の調査と、達監督が独自の分析表を作りデータを収集し、映像を徹底研究して、相手チームの傾向をみつける。野球部のグループラインを使って達監督が動画などを送りながら情報を共有。試合前になると、達監督が投打の攻略レポートを作成して全員に配る。
 SNSで攻略のヒントになる対戦予定チームの小さな呟きまで集めるという。プロ野球顔負けの情報戦で敵の弱点を徹底してあぶりだすのだ。

 ID野球の元祖、野村克也氏が「データを使い癖を見つけることは訓練、習性」と言っていたが、それが寝屋川には浸透していて、試合中も監督へ「サインが読めました!」などの進言があるという。
 攻撃や守備のサインは、もちろん監督が出す。だが、「生徒からの逆サインがあるんです。ここで走らせてくれとか」と笑う。達監督も、柔軟にそれを受け入れるが、その監督と選手の密なコミュニケーションも寝屋川の“高偏差値野球”の究極形かもしれない。

 選手のポジションは入部時の本人の希望。20人のベンチ入りメンバーを決める際には、選手に「それぞれの理由つきで」1位から20位までの順番をつけて投票させた。ただ、最終メンバーも、その適材適所も達監督が見極める。エース右腕の藤原は、中学時代はキャッチャーでバッテリーを組む岡崎は、今春にライトからキャッチャーに転向した。その前のキャッチャーで4番の野田はライトにコンバートされている。

 自由に見えてチームに守るべきルールがある。
 着任したとき、達監督は制服などの乱れが気になった。強豪高の練習試合に連れて行き「君らと何が違うかを探しなさい」と注文をつけると、選手が「身だしなみの違い」を口にした。
「じゃあ、どうする?」
 以来、制服のボタンを一番上までとめる、挨拶をする、通学の電車内で飲食をしない、クラスの打ち上げのようなものには参加しない、など、生活面を律する寝屋高の野球部ルールを生徒自身が作っていった。