大阪公立進学校の寝屋川高はプロ顔負けの情報収集で打倒私学を狙う(写真・寝屋川高野球部提供)

 何もこの10年間ですべてが順調に進んだわけではない。大阪大会での最高成績はベスト32。達監督は、試行錯誤を続けてきた。公立の進学校。もちろん、私学の強豪と違い難関な入学試験を突破しなければならないのだから“スカウト活動”は難しい。
 
 それでも達監督は、学区にあるリトルやシニア、ヤングリーグなど、硬式球を扱うチームに挨拶回りをして、監督やコーチとの親交を深めている。学力を伴う選手が出てきたときに「ぜひ寝屋川を受験してください」とできる範囲での声かけを行い、夏には高野連が認めている「体験会」を実施している。
 主将の一貫田も「体験会での雰囲気がよくて、寝屋川で野球がやりたくて入学した」という。

「今は幸いにも公立志望が増えているんですよ。保護者の考えも変わってきていて、大阪は甲子園出場も簡単ではないので野球だけでなく勉強も頑張るという傾向なんです」と達監督。
 チームのレギュラー9人のうち4人が硬式経験者。藤原も枚方ヤングホークス出身だ。現在は3年が19人、2年が15人、1年9人の部員がいる。今年は、3年生のレベルが高いため、入部早々に自信喪失して退部した生徒が数人いたが、例年、ほとんど脱落者がいない。

 達監督に、その監督哲学を問う。
「学校教育における部活動ですから人間形成の場であることは間違いありません。でも、僕は彼らに人間形成を語れるほどの人間じゃないんです。だから入部してきた時点で、僕は彼らに『どうやれば勝てるかという方法だけを教える。ただし勝利至上主義ではない。勝たないと何も得られないとは思わない』と言うんです。野球を好きになってもらいたい。勝つ方法を教えて、彼らが興味を持ち、自分らで考えて努力する。その時間が将来、何かにつながってくれればいいのですが、僕なんかが偉そうに野球で人を育てるとは語れません」
 その実直さに生徒がついてくるのかもしれない。

 計8人いる女性マネージャーもチーム戦力としてデータ集めなどで大きな役割を担っているが、達監督は、「サポートしたいとか、お手伝いしたいという考えなら入部しないでくれ。マネージャーの仕事はチームを勝たせること。一歩下がるんじゃなく、一歩前へ出て引っ張って欲しい」と入部時に釘を刺す。