イングランドのエースFWのケイン。堅守からセットプレーでの得点がパターンだ(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 サッカーの母国と呼ばれながらワールドカップ優勝が1966年から遠ざかっているイングランド代表が、ロシア大会で7大会ぶりにベスト4へ進出、復活への狼煙をあげつつある。

 28年前のイタリア大会では、天才司令塔ポール・ガスコイン、点取り屋ゲーリー・リネカーらのビッグネームが活躍。準決勝ではリネカーのゴールで追いつきながら、優勝した西ドイツ代表の前にPK戦の末に敗れ去った。
 その後もFWマイケル・オーウェン、MFデビッド・ベッカム、MFスティーブン・ジェラード、MFフランク・ランパード、そしてFWウェイン・ルーニーらのスター選手を輩出。常にファンやサポーターの期待を集めてきたが、ワールドカップでは2002年、2006年大会のベスト8が最高成績だった。

イングランド史上最多の53ゴールをあげていた、32歳のルーニーが昨年8月に代表引退を表明。今大会はビッグネームが不在で、先発メンバーの多くがワールドカップ初体験。チームの平均年齢も約26歳と大幅に若返ったなかで、ベスト8の壁を破ってみせたのである。

 なぜイングランドは復活できたのか。

開幕前の下馬評は決して芳しいものではなかった。チュニジア代表や初出場のパナマ代表と同じグループGに入ったことで、グループリーグを突破すれば及第点、ベスト8に進出すれば大満足という声が大多数を占めていた。それを鮮やかに覆した快進撃の理由を探っていくと、3つのキーワード「前代未聞のスキャンダル」「国を挙げた育成改革」「ビッグクラブの金満ぶり」――に行き着く。

 真っ先に挙げられる「前代未聞のスキャンダル」が発覚したのは2016年9月。イギリス紙の『デイリー・テレグラフ』が仕組んだ囮取材に、イングランド代表監督に就任したばかりのサム・アラダイス氏が引っかかり、代理人に扮した記者の前で発した不適切な発言が大々的に報じられた。

 囮取材のなかでアラダイス氏は、国際サッカー連盟(FIFA)が選手の第三者保有を禁じていることに対して「馬鹿げている」とコメント。「ルールをすり抜けるための助言を指南したい」と架空企業との契約をもちかけ、前代表監督のロイ・ホジソン氏やイギリス王室を侮辱する発言も残した。

 事態を問題視したイングランドサッカー協会(FA)は、就任からわずか67日目で、ワールドカップ予選の指揮を1試合執っただけのアラダイス氏を電撃解任。2013年からU-21イングランド代表監督だったガレス・サウスゲート氏を暫定監督にすえた。
 在野に適任者がいない状況での、いわゆる消極的な選択だったが、これが結果として奏功する。