#02 フィクサーとの待ち合わせ

[写真]フィクサー仲間のロカンと馴染みのカフェでくつろぐマジッド

 シリアやイラクなど地球上で最も危ない地域とされる場所で取材を行うには近年、現地人の協力が欠かせない。取材対象地域の情勢やそこに住む人々を知り、常に最新の情報を手に入れ、警察や軍にネットワークを持ち、私たちのような外国メディアが安全に前線にたどり着いて取材できるようにアレンジしてくれる。彼らは「フィクサー」と呼ばれる。

 私は昨年、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いを取材するために、イラク北部のクルディスタンの首都エルビルという街に降り立った。目指すはイラク第2の都市モスルだ。当時ISがイラクにおける「首都」と呼んでいたモスルは、イラク軍・有志連合軍が共同で奪還作戦を行っていた。

 知り合いのジャーナリストたちの情報で、あるフィクサーとコンタクトを取り、カフェで落ち合うことになった。地獄のような暑さがまだ訪れる前の4月のイラク。砂糖のたっぷり入ったチャイを飲みながらテラスの席で待っていると、目の前に突然若い男がドカっと勢いよく腰を下ろした。男はジーンズにラフなTシャツ、アーミーブーツを履き、両腕に包帯を巻いていた。