#07 戦場に行く前にテスト勉強

[写真]モスル市内の友人の家を訪ね、ご馳走で歓迎されるマジッド

[写真]リビングルームでくつろぐマジッドとその友人

 ある時、珍しくマジッドが別の若い運転手を連れてきた。連日モスルに片道2時間以上もかけて通っていたから、さすがに疲れが溜まったのだろうか? 「大丈夫か?」と聞くと「大学のテストがあるんだ」と彼は返した。何やらゴソゴソとプリントを取り出し、揺れる車内でマジッドは勉強し始めた。

 初めてカフェで会った時、彼は20代後半に見えた。周りのフィクサーたちが彼にいろいろと相談してくる姿を見て、職業としてフィクサーをフルタイムでやっているのだろうと思っていた。しかし彼はなんと大学に通っていて、まだ20代前半だった。なんとシュールな光景なのだろうか。私たちは数時間後にはヘルメットを被って、砲弾が飛び交う戦場を駆け回る羽目になる。世界中のメディアが注目している危険な現場を取材しに行く車内で、彼はそんな事は全く関係ないとでも言うように、大学のテスト勉強をしていた。

 何が起ころうとも、世界の終わりかのような光景を目にしても、日常生活は続いていくのだろう。モスルの友達の家に行けばご飯を食べ、一緒に水タバコを吸う。戦争中でも、紛争の最前線で命を危険に晒していても、何でもない普通の光景も存在するのだ。