大手商社の伊藤忠商事が独身寮を復活させたと話題になっています。独身寮は2000年代前半、経営のスリム化に伴って手放す企業が増えていましたが、最近では逆に復活させる動きが活発になっています。日本型経営の象徴の一つとも言われた独身寮ですが、なぜこれを復活させているのでしょうか。

写真:アフロ

 かつて日本の大手企業の多くが独身寮を持っていました。しかし経営のスリム化に伴って資産売却を実施するケースが増え、多くの独身寮が市場で売却されていきました。伊藤忠もかつては独身寮を保有していましたが、業績の悪化を理由に2000年に売却しています。売却後は、マンションを一括で借り上げ、社員寮の代わりとしてきましたが、今年に入って同社は従来型の独身寮を復活させています。

 大手商社では、独身寮を復活、あるいは充実させるところが増えています。三井物産も一旦は減らした独身寮を拡大し、ほぼ全員の新人が独身寮に入るという体制を復活させています。

 各社が独身寮の拡充に力を入れているのは、社員の結束力を強化するためです。近年、各分野を横断するビジネスが拡大しており、社内のネットワークがより重要になっています。横のつながりを拡充するためには、「同じ釜のメシを食う」のがもっとも手っ取り早い方法というわけです。

 確かに一定期間、共同生活を行うことで交流が深まるのは事実ですが、よい点ばかりとは限りません。

 共同生活を行えば、そこでは共通の規範が生まれますから、いちいち説明しなくても「あうん」の呼吸でコミュニケーションが取れるようになります。しかし、こうした属人的なコミュニケーションが深まりすぎると、これ以外の情報経路がおざなりになる可能性があります。また共同生活は生活パターンや思考パターンを均一にする作用がありますから、異質の人材を獲得しにくくなることも考えられます。

 これからの時代は、異なる人種や価値観を持った人たちが、顔を合わせずに仕事を進めることが標準的となるはずです。部門間の情報共有やアイデアの具現化も、暗黙知ではなく形式知で行うことが重要であり、本来であれば、社内SNSなどシステム的に解決するのが合理的でしょう。

(The Capital Tribune Japan)