39歳のレジェンド・パッキャオは9年ぶりのTKO勝利で王座復帰した(写真・ロイター/アフロ)

元6階級王者のマニー・パッキャオ(39、フィリピン)が15日、マレーシア・クアラルンプールのアシアタ・アリーナで、WBA世界ウェルター級王者、ルーカス・マティセ(35、アルゼンチン)のベルトに挑戦、計3度のダウンを奪い、7ラウンド2分43秒にTKO勝利した。パッキャオのKO勝利は、2009年11月のミゲール・コットとのWBO世界ウェルター級戦以来9年ぶり。パッキャオは、昨年7月のWBO世界ウェルター級王座の初防衛戦でジェフ・ホーン(豪州)に、際どい判定で敗れて以来、1年ぶりの再起戦だった。一度は引退するなど、数々の常識を覆してきたレジェンドボクサーは39歳にして脅威の王座復帰を遂げた。

 これが試合の度に再引退が話題に挙がる39歳のボクサーだろうか。全盛期とはまでは言わないが、ここ数年見られなかったスピードとテンポ、一撃に殺気をこめたパッキャオが帰ってきた。44戦39勝36KO、KO率82%を誇る“KOマシン”マティセを相手に一歩も引かない。序盤からジャブと手数でラウンドを支配すると、3ラウンドに最初の見せ場を作る。中間距離からのまるで突き出すようなトリッキーなアッパーがマティセのガードの隙間からアゴにヒット。チャンピオンは尻餅をつくようにダウンした。

 満場の大歓声。だが、パッキャオはラッシュはかけない。

「激しくはいかなかった。自分のペースを守ったんだ」

 マティセ陣営が「まだ序盤だ。大丈夫だ、落ち着いていけ」と、アドバイスを送っていたことをまるで聞こえていたように反撃のリスクと自らの体力を考慮した老獪さである。
 さらに右のリードブローでリングを支配し、マティセのガードが空いた場所を探すかのようにパンチを打ち込んでいく。もうパッキャオの独壇場。マティセは、圧倒されて下がるばかりだ。
 5ラウンド。パッキャオは、右のリードブローに強弱をつけた。軽いジャブを2つ打った後に、スピードと体重の乗った右フック。対応できなかったマティセは、右ひざをつき、その場でしゃがみこんだ。終了間際の2度目のダウンだった。クライマックスは7ラウンドにやってきた。

「マニー」「マニー」の大合唱が起きる中、また強烈な左アッパーを下からねじこむようにして打ち抜くと、もう立ってられなくなったチャンピオンは、また、その場にしゃがみこみ、レフェリーは、彼に戦意のないことを確認すると両手を激しく交差させてTKOを宣言した。
 総立ちの場内。パッキャオは、コーナーに駆け上がり拳をつきあげた。
 1年ぶりの再起戦での王座復帰。これがパッキャオにとって9個目の世界ベルトとなるが、WBAのベルトは初めて。KO勝利は、実に9年ぶりだった。

 リング上で、パッキャオは、笑顔でインタビューに答えた。
「マティセはタフなボクサーなので、こんなに早いラウンドでダウンを奪えたのには驚いた。KO勝利はボーナスみたいなもの。大昔にこんなことがあったね」
 そう言って笑った。
「カウンターが良かった。いろんな対応は自分たちの戦略、想定通りにできた。全力を尽くした。ハードな練習をしてきたかいがあったよ」
 名トレーナーであるフレディ・ローチとの契約を解除。今回は、これまでアシスタントコーチだった幼なじみでもあるフェルナンデスをメイントレーナーに昇格させ、ドネア・シニアを参謀に招くなど、新しいチーム・パッキャオを組んで挑んだ再起戦だった。
「新しいチームがよく支えてくれた」
 国会議員としての活動もあり、ボクシングだけに専念できない環境にあるが、フィリピンに腰を据えて、トレーニングする新体制が39歳のレジェンドには合っていたようである。
 一方、初防衛に失敗したマティセは、試合後に、「パッキャオは偉大なファイターであり、偉大なチャンピオンだ」と、尊敬の念を表した。
「ボクシングの勝敗は、いったりきたり、ぐるぐると回っていくもの。きょうは、私が敗れる番だったということ。偉大な伝説のパッキャオに敗れたのだ」
 2階級王者は、そう潔く完敗を認めた。