株式相場は、時として一般の人が理解に苦しむような動きを見せる。米中貿易摩擦がヒートアップし、「貿易戦争」突入リスクが高まった7月初旬以降、米国株と日本株が市場関係者の警戒論を尻目に急速に切り返しているからだ。とりわけ、米国の小型成長株の影響が大きいナスダック総合指数は7月13日、2日続けて史上最高値を更新。貿易摩擦どこ吹く風、といった感じで上値を追っている。なぜ、このような状況になったのだろうか。その底流を探ってみよう。 (解説は証券ジャーナリスト・駿河一平)

【連載】証券ジャーナリストが注目する 気になる株

米・新興企業向け株式市場ナスダック(写真:ロイター/アフロ)

 マーケットが悲観ムード一色になったとき、株価は強烈なカウンターパンチを放ち、巻き返し相場への一歩を踏み出す――。株式市場では古くからこうした値動きを「アク抜け」、または「悪材料出尽くし」と呼ぶ。このうち、アクとは灰汁(あく)のこと。株価の上澄み部分がキレイに取り払われ、相場の「旨味」が引き立つ状態に急変するのが、アク抜け相場だ。

 面白いのは、このアク抜けが、「もはや一巻の終わり」といった感じで懸念材料が襲来したタイミングで起こる、という点だ。万事休す、と投資家があきらめたところで、ペロッと舌を出すようにして、株価が復活の狼煙(のろし)をあげるケースは、株式市場ではめずらしくない。

 7月6日、米トランプ政権は知的財産権の重大な侵害を理由に、中国に対して340ドル相当の輸入製品へ25%の制裁関税を実施。中国も対抗措置を繰り出し、両国の全面対決による貿易戦争の様相を呈した。トランプ政権は10日、今度は総額2000億ドル規模となる6031品目に追加関税を課す原案を公表。これに対しても中国は反発し、米中貿易摩擦は激しさを増す一方だ。

 通常であれば、株価はこうした動きに敏感に反応して、株安が加速する、と見るのが普通。しかし、現実はまったく違った。

制裁関税実施直後から動きに変化

 米国の代表的株価指数のNYダウ工業株30種平均は6月11日、取引時間中に2万5402ドルまで戻したあと、ズルズルと下落し、6月28日には2万3997ドル安値を付け、その後も数時間低迷を続けていた。ところが、制裁関税を実施した7月6日の終値は181ドル高。その後も順調に上値を追い、7月13日には6月15日以来、約1カ月ぶりに2万5000ドル台を回復した。同日のナスダック総合指数は2日連続で史上最高値を更新。16日、17日も頑強な足取りを続けている。

 日経平均はどうか。制裁発動の前日となる7月5日に2万462円まで下落したが、発動日の6日から反転を開始。7月13日には2万2692円と前日比504円高まで買い進まれる場面があった。アク抜けを絵に描いたような動きだ。

 一方、中国・上海総合指数は7月6日の2691ポイント安値を付けたところでボトムアウト。その後は比較的、落ち着いた動きを示している。