WBO王者木村翔(左)のV2戦はドタバタで8日後の中国で決定。開催に協力した一人、元格闘家の安生洋二氏(右)がなぜかバナナをプレゼントした

WBO世界フライ級王者、木村翔(29、青木)の2度目の防衛戦が今月27日に中国の青島市で同級4位のフローイラン・サルダール(29、フィリピン)を迎えて行われることが19日、都内のホテルで発表された。木村は昨年7月に上海で五輪2連覇の中国の英雄、ゾウ・シミンをTKOで倒す“世紀の番狂わせ”で王座を奪取、一躍、中国で有名人となり大晦日に初Vに成功したが興行権の問題があり次の試合が決まらなかった。サルダールは2年前に来日、元OPBF東洋太平洋Sフライ級王者、井上拓真(22、大橋)をダウンさせた経験のあるハードパンチャー。元2階級王者で同級1位の指名挑戦者、田中恒成(23、畑中)が観戦予定で防衛に成功すれば、次のV3戦は、注目の日本人決戦となりそうだ。

 V2戦は決定まで二転三転した。大晦日に圧巻のTKO勝利で元世界王者、五十嵐俊幸(帝拳)との指名試合をクリア、その後、V2戦のオファーがいくつか舞い込んだが、興行権(オプション)を握っている前王者のゾウ・シミン側がクビをたてにふらず、かといって中国での興行にも難色を示していた。木村陣営が田中恒成との指名試合を覚悟しかけたときに救いの手が。中国のボクシングプロモーターであるマックスパワープロモーションとつながりのある格闘技関係者が協力に動いてくれたのだ。

 世界戦実行委員会のスポークスマンとして会見に同席した元格闘家の安生洋二氏も、その関係者の一人で、「なんとかしてあげたかった。幸い私たちのネットワークが役立ったが、木村君がスーパーチャンピオンになったら映画にできそうなくらいの色々なことがあって、やっと、この試合を実現できた。私も現場に入ります。勝ってもらいたいですね」とエールを送った。

 結局、ゾウ・シミン側が、オプションを行使することになり、日程と対戦相手が内定したのは6月中旬。開催場所も廈門市から青島市へと変更するドタバタだったという。中国側は、先に13日に記者発表をしたが、日本での発表は、この日にずれこんだ。

 木村は、その間の心中を「相手が決まる、決まらない、でモチベーションは変わってきます。でも、僕は、チャンピオンである限り、目の前に現れた敵を倒すことが大事、相手が誰であろうと、どこでやろうと何も変わらない心境だった」と語った。

 苦労しながらも最終的に中国での試合が決まった背景にあるのは木村の知名度だ。ゾウ・シミンを倒しただけでなく、バイト生活をしながら成り上がったバックストーリーが共感を呼び、中国では、卓球の福原愛の次に有名な日本人アスリートとなっている。
「この1年で100人以上中国からファンがジムにやってきた」(有吉会長)。
 爆買ツアーのついでに高田馬場の青木ジムを訪ねるファンが後をたたず、中には「一緒に練習させてくれ」と、汗を流す熱狂的なマニアまでいるという。
会場の青島体育センター国信体育館は、1万人収容の体育館で、この試合は、CCTV5(中国中央電視台のスポーツ専門チャンネル)でゴールデンタイムに1時間、中国全土に生中継されることも決まった。木村の世界戦はセミファイナルで、メインには中国初の世界王者で、内藤大助の世界王座に挑戦経験もある35歳のベテラン、熊朝忠が、WBA世界ミニマム級王者のノックアウト・CPフレッシュマート(タイ)に挑戦する試合が組まれている。
 木村の相手が中国人ではなくフィリピン人のため、会場のムードがホームとなる可能性も高く、有吉会長も「公開スパーなどもあるので、そういう段階から、マスコミや中国の人たちを味方につけたい」と言う。木村も「あれからもう2、3回中国に招待されているし中国の印象は悪くない」と、第2の故郷とも言える中国での試合を歓迎している。