ニホンウナギの稚魚であるシラスウナギの不漁が続いている。ニホンウナギの卵を人工ふ化させて成魚に育て、その成魚が産んだ卵を再び人工ふ化させるのが「完全養殖」だ。水産研究・教育機構(旧・水産総合研究センター)が2010年に完全養殖に成功してから8年。研究はどこまで進んだのか。同機構増養殖研究所の奥村卓二・業務推進課長に話を聞いた。

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2017年度の受精卵数は3年前の3倍に

人工養成ウナギ(水産研究・教育機構提供)

── 2年前の取材では、「採卵技術」「エサの開発」「飼育方法の確立」を中心に研究しているという話でした。これらの進捗を教えてください。

奥村 ふ化率の高い良質な受精卵を得るための採卵技術は、向上しています。採卵1回あたりに得られる平均受精卵数は、2014年度の29万粒から、2017年度は100万粒以上に増えました。良質な精子と卵を採れるようにする「ウナギ生殖腺刺激ホルモン」を使って成魚の成熟をうながしたほか、水温の調節によって複数の成魚の成熟度を合わせて、同時に採卵する手法を開発しました。採卵に使うオス・メスの成魚の数も増やして、受精卵の3倍増を実現しました。

 仔魚(しぎょ:稚魚の前段階)のエサについては、鶏卵や魚粉を用いたエサの開発を続けています。2年前に比べて研究は進んでいますが、まだ改善が必要です。絶滅が心配されるアブラツノザメの卵を使った現状のエサからの置き換えは、もう少し先の話になります。

 飼育方法では現在、シラスウナギの大量生産に適した大きさ、形状の水槽を検討中です。大量生産にはより大型の水槽が必要ということで、容量1000リットルの大型水槽を使って飼育試験を行いましたが、ふ化した仔魚がシラスウナギに育つまでの生残率は約1%となり、小型水槽の約4%よりも低下しました。水槽の洗浄にも手間がかかり、単に容量を大きくするだけでは大量生産の実現が難しいことがわかりました。

── 実用化に向けた課題は?

奥村 生産コストをいかに下げるかが大きな課題です。たとえば、水槽の清掃や給餌の自動化によって、それらの作業に要する人件費を下げられないかどうかを検討しています。給餌によって発生するコストも無視できません。現在、仔魚には1日に5回の頻度で液状のエサを与えていますが、食べ残しが水槽を汚すため、給餌のたびに水槽を洗浄しなければなりません。食べ残しが減れば、エサの無駄が減り、水槽の洗浄回数も減らせる可能性がありますので、エサの費用と人件費の削減に期待が持てます。これらも含め、天然のシラスウナギの価格に近づけるように研究開発を続けています。