『月光仮面』(C)川内康範/宣弘社

 昭和時代から続く、仮面ライダー、スーパー戦隊、ウルトラマンなどの特撮ヒーローは、いまもなお子どもたちだけでなく、大人たちをも魅了してやみません。その特撮ヒーローの元祖と言われるのが「月光仮面」です。今年、誕生から60年を迎えた月光仮面は、いまのヒーローたちと比べるとかなり違って見えます。主人公はお兄さんではなく“おじさん”で、頭にターバンを巻いた白装束のいでたちは手作りできそうなほどチープ。また乗っているバイクはどうみても市販品などと、いまでこそツッコミたくなる要素が満載なのです。折りしも、映画最盛期の時代に、「熱量十分、金なし、経験なし」で挑んだ制作者たちが、意気込みとアイデアを武器に戦後日本のエンターテインメントの新たな扉を開くことになろうとは誰が想像したのでしょうか?

 「【連載】「月光仮面」誕生60年 ベンチャーが生んだヒーロー」の第1回では、映画評論家で映画監督の樋口尚文さんが、映画最盛期のありえない状況下での当時の「テレビ映画」の制作について解説します。

 

 

ウルトラマンや仮面ライダーなどの特撮テレビヒーローの祖、『月光仮面』とは?

 今や『月光仮面』というテレビヒーローに日本じゅうの子どもたちが熱中したことを知る人も少なくなってしまったことだろう。『月光仮面』は、1958年2月24日から翌59年7月5日まで、なんと130回にわたってラジオ東京テレビ(現在のTBSの前身)で放映された。当初は月曜から金曜まで夜6時から放映された10分の帯番組で、それが人気を受けて毎週日曜夜6時からの30分番組となり、やがて毎週日曜夜7時に移った。

 なんともチープなつくりの他愛ないヒーロー番組が、日曜のゴールデンタイムに昇格したというわけだが、TBS日曜夜7時の30分枠といえば、ピンとくる人もいるだろう。この枠は、やがて1960年代半ば以降は円谷プロダクション制作の『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『怪奇大作戦』や東映制作の『キャプテンウルトラ』『柔道一直線』などの大人気子ども番組が目白押しであった通称〈タケダアワー〉なのである。

 〈タケダアワー〉の名前の由来は、この枠を武田薬品工業が長く一社提供していたからであるが(♪タケダタケダタケダ~というコマーシャルソングに武田薬品工業の大阪・十三の工場空撮が映えるトップクレジットでおなじみだった)、仕切っていた広告代理店が小林利雄社長の宣弘社であった。