財政制度等審議会で年金支給開始年齢のさらなる引き上げが議論されたり、経済財政運営の基本方針(いわゆる骨太の方針)に定年延長が盛り込まれたりするなど、政府は生涯労働に向けた布石を着々と打っています。一方、会社員の多くが定年後も働くことを希望していますから、定年という制度は事実上、消滅に向かいそうな勢いです。

イメージ写真:アフロ

 明治安田生活福祉研究所が定年前の男女正社員2500人に対して行った調査によると、約8割が定年後も働きたいと回答しています。働きたいという理由も、男性の場合、50代前半では73.1%が、60代前半では58.4%が「日々の生計維持」という経済的理由をあげています。

 日本の年金制度は、自身が積み立てたお金を老後にもらうという仕組みではなく、現役世代が高齢者世代を扶養するという賦課方式ですから、少子高齢化で現役世代が減少すると、仕組み上、年金財政が厳しくなります。かつてのような大盤振る舞いはもうできませんから、経済的理由で生涯労働を行うというのは、必然的な流れといってよいでしょう。

 ただ、生涯労働を社会に定着させるためには、超えなければならない課題もあります。日本企業は基本的に年功序列ですから、年齢が高いほど賃金が高いという傾向が顕著です。無制限に高齢者を雇い続けると、企業はコストの高い高齢者ばかりになってしまい、必要な業務を実施できないという状況に陥る可能性もあります。こうした事態を回避するために、各社が導入しているのが、一定の年齢以上になると、自動的に管理職の職務を解く、いわゆる役職定年です。

 同社の調査によると役職定年になった人の9割が年収減となっており、4割が半分未満に年収がダウンしていました。また6割の人はモチベーションが低下しています。

 現実的に考えた場合、生涯労働を実現するためには、賃金の高い社員の年収を下げる措置が必要であり、役職定年は避けて通ることができないでしょう。役職定年の際に異動があったケースは約3割、なかったケースは約7割でした。異動の有無に対して満足している割合は、異動がなかったケースのほうが約9割と高かったのですが、異動があったケースでも7割以上が満足しているという結果になっています。

 もっと早い段階でキャリアを見直す制度を構築したり、異動によって環境を変えるという措置があれば、役職定年をさらにスムーズに進めることができそうです。会社員自身も、全員が出世できるわけではないという当たり前の現実を受け入れ、40代くらいから第2のキャリアについて強く意識しておく必要がありそうです。

(The Capital Tribune Japan)