人口が減少し、社会の成長が見込めない時代といわれます。一方で、科学技術の進化が、高齢化の進む日本の未来を、だれにとっても暮らしやすい社会に変えるのではないかともいわれています。わたしたちは一体どんな社会の実現を望んでいるのでしょうか。

 幸福学、ポジティブ心理学、心の哲学、倫理学、科学技術、教育学、イノベーションといった多様な視点から人間を捉えてきた慶応義塾大学教授の前野隆司さんが、現代の諸問題と関連付けながら人間の未来について論じる本連載。17回目は「幸せの日本論」がテーマです。


よくいわれる日本人の特徴

[イメージ]考えをはっきり言わないとされる日本人。こうした特徴は悪いことなのでしょうか(写真:アフロ)

 今回は『幸せの日本論』について書きます。

 これまでのほとんどの本は、脳神経科学や心理学、工学によるエビデンス(証拠)のある内容についての本でした。これに対し、この本では、芸風を変えて、過去の日本論を大量に読み込み、日本論の決定版を書く、と意気込みました。

 これも面白い本だと自分では思うのですが、再版になるほど大好評というところまでは行きませんでした。

 この本の中心的な論点を以下に述べます。

 まず、よくいわれる日本人の特徴。

(1) 日本人には裏表がある
(2) 日本人は考えをはっきり言わない
(3) 日本人は必要以上に謝る
(4) 日本人は人の目を気にする
(5) 日本人は決断が遅い
(6) 日本人は意味もなくニコニコ笑う
(7) 日本人は独立心、自尊心、自己統制感が低い
(8) 日本人は外国人に対して差別をする
(9) 日本人には海外コンプレックスがある
(10)日本人は日本人論が好きである

 いかがでしょう? これらは、日本人の悪い特徴でしょうか? 私は、本書の中で、これらは実はいい特徴なのではないかということを述べています。なぜいい特徴なのか。

 結論から言うと、「日本人は、中心に『無』がある文化を持っていて、どんな新しいことも矛盾なく受け入れ、やがて日本化する」ということではないかと考えています。