米国で世界奪取の快挙をやってのけた伊藤雅雪(写真は資料・山口裕朗)

WBO世界スーパーフェザー級王座決定戦が28日(日本時間29日)、米国フロリダ州キシミーのキシミー・シビック・センターで同級1位のクリストファー・ディアス(23、プエルトリコ)と、同級2位の伊藤雅雪(27、伴流)で争われ、伊藤は4回に3連打でダウンを奪うなど、序盤から試合をコントロールして、「116-111」、「117-110」、「118-109」の3-0判定で世界初挑戦で新王者となった。日本人が本場・米国で王座を獲得するのは、1981年に三原正がWBA世界スーパーウェルター級タイトルを獲得以来、37年ぶり5人目の快挙となる。

 米国メディアも、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が返上した王座を“無名の日本人”がトップランク社が育てたホープを破って獲得したタイトル戦を大きく報じた。

米国の権威あるボクシングメディアのリング誌は「伊藤がディアスを判定で圧倒する番狂わせ」と、この試合を「UPSET(番狂わせ)」と表する見出しを取って伝えた。

「伊藤は、自分自身と彼の妻に東京に戻る際にはWBOの世界ベルトをスーツケースに付け足して帰る約束をしていた。しかし、そのように信じていたのは、プエルトリコからの対戦相手クリストファー・ディアスの地元かのように応援団が集まったフロリダ州キシミーのキシミー・シビック・センターの中で、日本から長旅をしてきた伊藤と、彼のセコンド、わずかな家族と友人だけだった」

 前評判は23勝無敗(15KO)のディアスが圧倒的有利だったことを紹介した上で、この試合の詳細なデータを掲載した。伊藤はパンチ数が686発でヒット数は28%の194発、対して、ディアスはパンチ数601発でヒット数は31%の190発だった。
 ディアスはパワーパンチでも349発中143発と41%のヒット率で、454発中168発で37%だった伊藤を上回ったが、同記事は「伊藤のパンチは重く、そして破壊的だった。ディアスの顔の左目周りの変色ぶりがその証明だ。第4ラウンドに伊藤は、右ストレートでこの試合で唯一となるダウンを奪った」と、伊藤のパワーが勝負の分かれ目となったと評した。

  また「伊藤(24勝1敗1分け、12KO)は、身長で2.5インチ(約6.4センチ)上回り、リーチでも68インチ対64インチと、支配的な4インチ(約10センチ)の差があった。これによって伊藤は、身長に劣るが、接近戦で力強く打ち込んでくるディアスを最初に抑え込んだ。最初の2ラウンドで伊藤は距離の取り合いを制した」と、序盤から伊藤が体格差を生かしてペースを握ったと分析。

 さらに「第5ラウンドにディアスは、流れを取り戻し左の大きなフックをヒットさせたが、その後は、伊藤が勝利へ優位に試合を進めたようだった。彼はディアスが左フックで時折、前に出てくる間も落ち着きを保ち、ディアスがパンチをヒットさせても平然としていた。最後の2ラウンドで、ディアスは伊藤から、かなりの数の右パンチをもらって腫れた左目が開かない状態で戦っていた」と続けた。

 最大9ポイント差がつく文句なしの判定勝利となったが、「会場はまるでディアスのホームだった。だが、ファンに(判定負けした)ショックはなく、会場から『盗人』と叫ぶ声もなく、ディアス本人さえ、最終判定が読まれる前に拍手を送り、土曜日の夜に伊藤は何の疑いも残さなかった」と、会場のほとんどがディアスの応援に回っていたにもかかわらず、判定結果に異議を申し立てる声がなかった様子を伝えた。