神の子トーレスは3戦を消化して今だに不発(資料写真・アフロスポーツ)

 目指す方向を指さしながら、斜め前方へ何度もスプリントした。しかし、味方からはボールが出てこない。そのたびにフェルナンド・トーレスは天を仰ぎ、次の瞬間、ピッチに視線を落とした。

 清水エスパルスのホームに乗り込んだ、1日の明治安田生命J1リーグ第19節。ラ・リーガの強豪アトレティコ・マドリードから今夏にサガン鳥栖へ加入し、2戦連続で先発メンバーに名前を連ねた34歳の元スペイン代表FWはシュートを1本も放てないまま、後半20分に交代を告げられた。

 デビューから3戦を終えて、待望の来日初ゴールはまたもお預けになった。試合も前半20分に決められたPKを最後まで挽回できなかった。試合後の取材エリア。トーレスは「新しいチームに入ったばかりなので」と前置きしながら、新天地サガンで魅せたいプレーについて具体的にこう言及している。

「できればディフェンスラインの後ろにボールが欲しい。今日は何回も(ラインの後ろに)行ったけどスルーパスが来なかった。残念だったけど、練習からチームで何回も合わせればコンビネーションはもっと、もっとよくなると思う」

 ジュビロ磐田との前節で、相手の背後を突くロングパスを最終ラインから一閃。相手GKクシシュトフ・カミンスキーの美技に防がれたものの、あと一歩でゴールだったトーレスのループシュートを導いたDFキム・ミンヒョクが、エスパルス戦では累積警告による出場停止だった。

 加えて、ベガルタ仙台とのデビュー戦を含めて、トーレスと息の合ったコンビネーションを見せていたFW小野裕二が足をつって、わずか27分間プレーしただけでベンチへ下がるアクシデントも発生。サガンはそれまでの[4‐3‐3]を[4‐4‐2]に切り替えざるを得なくなった。

 自身よりも遅れて加入したFW金崎夢生(前鹿島アントラーズ)とは、まだコンビネーションうんぬんを語れる段階にないのだろう。ならば、後方からのパスを何とか引き出そうとピッチの上で悪戦苦闘したが、ベンチへ下がるまでイメージを共有することはできなかった。

 パスの出し手として最も期待されるのは、リオデジャネイロ五輪にも出場した司令塔・原川力となる。エスパルス戦ではインサイドハーフで先発し、小野の負傷退場とともにボランチに下がった24歳は、攻撃陣を操る決定的なパスを放てないままトーレスと共にベンチへ下がった。

 トーレスの加入が決まったときから、原川は過去の映像を見て動きを研究してきた。しかし、いざ実戦になると思考回路をシンクロさせることができない、とエスパルス戦後に明かしている。

「ダイアゴナル(斜め前)に裏を狙ってくるのは、映像を見ていてもわかりました。そこを生かせるようにならないといけないんだけど、まだ来日して間もないので、パスを出す側や周りの選手も探り探りの状態だと思う。フェルナンドにしても夢生君にしても、このパスをつけていいのか、このパスが欲しいのかなとこちらが考えながらやっているので、まだまだ時間が必要だと思います」